課題1.亜硝酸酸化細菌Nitrotogaのゲノム情報に基づいた増殖活性因子の探索 昨年度までに,アマモ場群落の海水サンプルから亜硝酸酸化細菌Nitrotoga sp. AM1純菌株を獲得し,ゲノム解析から得られた遺伝子情報に基づき,代謝経路を予測した。本年度は,AM1株の代謝経路から,細胞の増殖活性を促す可能性を持つ有機物を推定し,その有機物が細胞に与える影響を評価した。有機物の選定にあたり,クエン酸回路など基本的な生化学反応経路の中間代謝物を候補とした。AM1株の増殖活性を促す物質として,ピルビン酸が有力な候補として挙げられた。ピルビン酸は,亜硝酸酸化の過程で発生する過酸化水素を分解するポテンシャルを持ち,一方で炭素源・エネルギー源として利用できる可能性も合わせ持っていることから,AM1株の増殖活性を促していることが示唆された。
課題2.茶畑の土壌サンプルを対象とした亜硝酸酸化細菌の分離培養 昨年度までに,茶畑の土壌サンプルから亜硝酸酸化細菌Nitrobacter vulgaris NbAS純菌株を獲得し,亜硝酸酸化細菌Nitrospiraを集積することに成功した。本年度は,獲得したNbAS株を対象にゲノム解析を実施した。すでに公開されているNitrobacterのゲノム情報と比較したところ,NbAS株は脱窒反応関連遺伝子を複数保持しており,特に亜酸化窒素還元酵素をコードする遺伝子nosZを保持していたのは,NbAS株のみであった。nosZ遺伝子に基づいた系統解析により,Bradyrhizobium属,Rhodopseudomonas属などのAlphaproteobacteria綱の細菌と近縁であることがわかった。今後,実際に亜酸化窒素を還元する機能を持っているかどうか検証していく予定である。
|