平成30年度は、2018年8-9月にインドネシアに渡航し、西ジャワ州・パガンダラン自然保護区で野外調査を実施した。野生霊長類2種(ジャワルトン・カニクイザル)の採食行動を観察したほか、同所的に生息するジャコウネコ類(複数種)の糞を採集した。種子散布に関連した調査として、ジャワルトン・カニクイザル・ルサジカ・ヒヨケザル・ジャコウネコ類の糞に集まる糞虫類をピットフォールトラップで採集し、ボゴール農科大学の研究者に種同定を依頼した。現在、同自然保護区の糞虫相についての論文を投稿準備中である。また、地上に落ちた食べかけのイチジク類を採取し、唾液に含まれるDNAの増幅を行ったが、残念ながら年度内の読み取りはできなかった。 以上の調査と並行して、ボゴール農科大学の学部生・大学院生を指導し、ジャワルトンの基礎生態に関するデータを充実させるとともに、適宜共同研究者と研究連絡を行って情報を共有した。 2018年8月にケニア・ナイロビで開催された国際霊長類学会、9月に長野で開催された日本哺乳類学会、10月に中国・大理で開催されたアジア霊長類シンポジウム、2019年3月に神戸で開催された日本生態学会で、それぞれ種子散布に関する研究成果を発表した。共同研究者のものを含め、10回の発表を行った。年度内に、本研究に関連した学術論文を9編公表した。このうち、Int. J. Primatol.誌に発表した論文は、種子散布者としてのマカク類の役割に焦点を当てた総説であり、当該分野において今後多く引用される文献になると考えている。
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