研究課題/領域番号 |
16K18620
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高須賀 圭三 神戸大学, 農学研究科, 研究員 (00726028)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 寄生バチ / クモ / クモ網 / 行動操作 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
ギンメッキゴミグモを操作し、本来脱皮前に張る休息網を自身を保護する網として強制的に発現させるニールセンクモヒメバチを材料とした。 兵庫県各地で被寄生および未寄生のクモのサンプリングを行い、飼育によって、ハチに操作され始めた状態、円網造網中、休息網造網中の3フェイズのクモを各3個体ずつ採取し、RNAを抽出し、RNA-seqによって発現変動解析を行った。アセンブリにはBridgerを用い、マップ率の網羅性などより、全リードからランダムな60Mリードをアセンブルした。次いで、得られた全遺伝子の発現量によるクラスタリングを行った。 しかしながら発現遺伝子シーケンスの結果は、不都合なことに条件内でも発現のばらつきが比較的大きく、また休息網は発現プロファイリングから見ると、どちらかと言えば円網造網中に近かった。すなわち休息網造網中と被操作中の発現ダイナミクスが類似することを前提とした当初の計画はうまくいかないこととなる。一方で、操作による発現変動はかなり多くの遺伝子に大きな影響を与えていることがわかり、ハチによる操作的作用が少なくともクモの発現ダイナミクスにまで及んでいることが裏付けられた。そこで、全7種あるクモ糸遺伝子のうち、休息網造網中と被操作中で、共通して円網造網中との発現量の差が統計的に大きい遺伝子(他種のクモ糸遺伝子DBを基に)に注目して解析を行うという次善策を採った。 その結果、通常は円網の捕虫スパイラルに使われる鞭状腺糸および装飾糸に使われるブドウ状腺糸の特定のアイソフォームにおいて、円網でほとんど発現されていないのに対して被操作と休息網で有意に高発現していることがわかった。すなわち鞭状腺糸の高発現アイソフォームは、円網のスパイラルではない別の機能をになっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クモだけでなくハチの側の発現解析も行う予定だったが、固定ポイントがクモの場合は操作開始後なのに対し、ハチは若齢時や操作開始直前を抑える必要があり、そのために同一サンプル(ハチを固定すると、そのサンプルにおいて被操作クモは得られない)をそれぞれの解析に用いることができず、サンプル不足によってハチの解析には至れなかった。 また、同属他種の操作系も実験に組み込む予定だが、N数が揃っておらず、RNA抽出前のサンプルをいくつか保存するにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
ギンメッキゴミグモ側の発現解析に反復数を追加すること、ニールセンクモヒメバチ幼虫の時系列サンプル(若齢~中齢~操作直前~成虫など)、同属他種操作系の同様のサンプルをそれぞれ準備し、解析を行うことが今後の優先課題である。 サンプルの充足が叶えば、操作直前のハチ幼虫にどのような発現変動が起きているのか、また他の操作系でも被操作クモに同様の発現変動が起きているのかなどを重点的に検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品で当初の見積もりよりも安く済んだり、不要になったものが出てきた。また、サンプリング調査出張や成果発表にかかる出張が別財源から捻出されたので、旅費に比較的多く未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプリング調査出張費用を追加で計上する他、飼育設備の充実、当初計上できなかった高額な試薬の購入等に充てる。
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