ニールセンクモヒメバチ対ギンメッキゴミグモ、マスモトクモヒメバチ対ゴミグモの造網行動操作系を材料に、飼育によって若齢・中齢前半・中齢後半・操作直前・操作開始後の5つのタイムポイントおよびハチ成虫の6つのフェイズ別サンプルを、反復をもって確保した。そして、ハチとクモそれぞれでライブラリ調整を行ない、RNA-seq解析によって発現配列データを得た。ギンメッキゴミグモは、未寄生の円網を張っているフェイズと、操作行動のモデル行動となっている同じく未寄生の脱皮網を張っているフェイズのサンプルも比較対象区として読んだ。 クモは全リードからランダムな60Mリードをアセンブル、ハチは全個体から10Mリードずつサブサンプリングしたものを各条件ごとに全てをマージした上で、全体で60Mリードになるように条件ごとにサブサンプリングしてアセンブルすることでリファレンス配列を作成した。 時間的な問題で、すべての解析は完了していないが、途中段階でも一部傾向が見えている。操作されている最中のギンメッキゴミグモは、円網や脱皮網造網中のサンプルと比べ、劇的に発現動態が変わっており、ハチによる操作の影響が少なくとも寄主クモの発現動態にまで影響していることがわかった。また、期待された被操作クモと脱皮網クモとの間の共通性は明確にはなかったが、特定のクモ糸遺伝子について高く発現するものが見出されており、操作に関わる遺伝子の可能性を今後探っていく必要がある。ハチの方では、ニールセンクモヒメバチの時系列比較において、操作直前と開始後の間に期待された発現変動は少なく、その前に当たる中齢後半にやや顕著な発現変動が見出されており、操作にまつわる発現は操作の数日前にピークを迎えている可能性が示唆された。マスモトクモヒメバチでは中齢サンプル数の不足から比較が行えていないが、操作直前と開始後の間に顕著な発現変動がないことが確認されている。
|