生物の表現型は、Hsp90を介した遺伝的変異の蓄積と解放、適応的な変異の固定を経て進化しうると提案されている。本研究では寒冷地に適応進化したカドフシアリの無翅女王を対象として、この進化過程の検証を試みた。この無翅女王は冬期の低温に対するhsp90発現の応答が、祖先表現型である有翅女王に比べて弱いことが示され、蓄積した遺伝的変異を解放しやすい状態であると示唆された。また、有翅女王及び無翅女王の遺伝的差異を明らかにするため、RAD-seqを実行した。今後、そのデータを用いて、無翅女王の進化過程で固定された適応的な遺伝的変異をスクリーニングできると期待される。
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