真社会性の進化を理解する上で、繁殖または労働カーストの決定機構の解明は重要である。しかしカーストは発生初期に識別できないか決定していないことが多く、責任因子の特定は難しい。申請者はカーストが遺伝的に決定しているアリ種を利用し、カーストごとに各発生ステージにおけるトランスクリプトームデータを得る手法と発生組織学的な違いを観察する手法を確立した。さらに現在は体内の幼若ホルモン(JH)量の測定手法の確立をはじめている。遺伝子発現、発生組織学的知見、JHの測定結果から、既にカーストが決定した個体を利用した遺伝子発現解析だけでは分からなかったカースト分化機構の総合的理解が進みつつある。
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