北海道で20世紀初め頃までに絶滅したエゾオオカミがかつての生態系で果たしていた役割を解明するため、北海道内の遺跡から出土した骨試料の同位体分析を行った。放射性炭素同位体比による年代測定の結果、分析した考古試料はいずれも縄文時代の骨であることが示された。続いて、炭素・窒素安定同位体分析による食性復元の結果、7個体中5個体はエゾシカなどの陸上動物を主要な餌資源としていたが、2個体はサケなどの海由来の餌資源に強く依存していたことが示された。カナダ沿岸の島嶼部には、海産物に強く依存した「海辺のオオカミ」と呼ばれる個体群が存在するが、エゾオオカミでも同様の生態を持つ個体群が存在した可能性が示唆された。
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