本年度は、以下の内容について実施した。 1)光変動栽培システムの構築: 大型生物環境調節室の内部に3つの植物栽培チャンバー(サイズ: 幅1.5m×奥行0.6m×高さ0.8m)を設置した。各チャンバーには、植物栽培用3色LED光源(RGB)を備え付け、光照射強度を波長ごとにコントロール出来るユニットを設置した。光照射は1台のパソコンで一元管理し、連続照射時間と照射パターンをチャンバーごとに制御するシステムを構築した。また、栽培時のCO2濃度を制御するユニットを組込み、栽培CO2濃度を変えて栽培することが可能になった。 2)照射システム制御と植物栽培: 植物は、気孔開放型のSL1-2株とその野生株であるCol-0株の2種のシロイヌナズナを約2カ月栽培した。栽培時の光照射パターン3段階、CO2濃度2段階の条件を設定した。光照射パターンは、強光(約90μmolm-2s-1)と弱光(約9μmolm-2s-1)の照射時間比率を2:1とし、強光の連続照射が3時間の“長期パターン”、20分の“中期パターン”、2分の“短期パターン”の3段階とした。このとき、日積算光量子密度と日長が同じになるように照射プログラムを調整した。栽培時のCO2濃度は、通常大気CO2濃度(約400ppm)と高CO2濃度(約700ppm)の2条件とした。 3)生長特性と光合成特性: 栄養成長から繁殖成長への切り替わり(花茎の伸長開始)時期は、品種やCO2濃度に関わらず、“長期パターン”個体ほど早かった。成長速度(葉面積の展開速度)は、“短期パターン”と比べて“長期パターン“で速かった。その照射パターンにともなう生長速度の違いは、高CO2濃度の栽培条件で小さくなった。最大光合成速度は、生長が早い“長期パターン”で高い傾向を示し、光照射に対する光合成反応は、高CO2栽培個体で高い傾向を示した。
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