研究課題/領域番号 |
16K18629
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (90625302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 周日行性 / キツネザル / 昼行性化 / マダガスカル / 活動性 |
研究実績の概要 |
1.マダガスカルにおける野外調査:2016年4月18日から5月30日にかけてマダガスカル北西部アンカラファンツィカ国立公園でチャイロキツネザルの行動観察を行った。調査は共同研究機関であるアンタナナリヴ大学理学研究科のTojotanjona Razanaparany氏と共同で行った。2015年7月から継続している調査を合わせて、終日観察(6:00-18:00)による活動データを552時間、終夜観察(18:00-6:00)による活動データを396時間蓄積することに成功した。また活動パターンに影響を与えうる環境要因のデータも計測を継続させて、この調査で回収することに成功した。
2.キツネザルの行動解析:観察中のチャイロキツネザルの行動は大きく採食・移動・休息に分類し、5分間隔で記録している。5分間隔で蓄積される各活動量を1時間単位もしくは1回の12時間観察単位でカウントし、活動パターンの数値データ化を進めた。これらの行動データを対象に、昼夜や季節間で活動パターンの比較分析を行った。解析の結果、チャイロキツネザルは1年を通じてどの季節も周日行性であり、昼夜にわたって活動していた。夜間活動量に季節差はみられなかったが、日中活動量は雨季に多く、乾季になると減少した。
3.論文の執筆:キツネザル類の周日行性に関する文献を網羅的にレビューし、同研究トピックに関してこれまでに解明されたことを整理し、今後取り組むべき課題を提案する総説論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.野外調査の状況:これまでに蓄積した合計948に及ぶ行動観察データは、国際学術論文を執筆するために必要な量に達している。行動データの蓄積は昨年度調査で完了とし、今後は栄養を分析するための食物サンプルを収集する調査に集中できる状態である。
2.データ解析の状況:行動データの統計解析は、共同研究者であるRazanaparany氏を教育指導しながら進めている。解析の結果得られた夜間活動量の安定と日中活動量の季節的な変動は、本研究における「霊長類がいかに昼の世界に進出したか」という問いに対して非常に興味深いデータの傾向を示している。今後、この現象のメカニズムを説明する環境要因の効果に着目してデータ解析を進めていく。
3.研究成果発表の状況:キツネザル類の周日行性に関する総説論文を執筆する過程で、周日行性の系統発生、至近メカニズム、および適応的意義について、現時点で解明されていることを整理することができた。本総説論文を『霊長類研究』誌に投稿し、現在は審査中であるが、査読者からは論文の出版に向けて好意的な反応を得ている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1.野外調査の実施:チャイロキツネザルの活動パターンに影響を与えていると考えられる食物の栄養を分析するために、食物サンプルを収集する野外調査を行う。雨季に多様な食物を摂取するため、2~3月にマダガスカル北西部アンカラファンツィカ国立公園における野外調査を予定している。
2.食物の栄養分析の実施:食物の栄養分析は京都大学霊長類研究所の実験施設を利用して行う予定である。協力者となる同研究所の受入研究者とはすでに計画について打ち合わせ済みである。食物サンプルの収集状況に合わせて実験の計画を立てる予定である。
3.共同研究の強化:アンタナナリヴ大学理学研究科のHajanirina Rakotomanana教授、Felix Rakotondraparany准教授と学術交流に関する協議を進め、同研究科と京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科との間で部局間協定を結ぶ計画を進めることで合意に至った。2017年度における締結をめざす。この協定により、本研究に必須である調査許可証の発行や共同研究者の派遣と招へい、生物資源サンプルの輸出などが大幅に容易になり、スムーズな計画遂行が期待できる。
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