関東地方の古墳時代人の遺伝的背景と親族構造を明らかにすることを目的として、東京都羽根沢台遺跡出土人骨の核ゲノム分析を行った。今年度は、昨年度に取得に成功した4個体の核ゲノムデータを用いて個体間の血縁関係推定を行った。昨年度までのミトコンドリアゲノムの結果と総合的に判断した結果、分析した2つの横穴墓いずれにおいても、同一の横穴墓に埋葬された個体間では親族関係が見られた。日本列島の古代人について、血縁関係が遺伝情報から明確に確かめられたのはこれが始めであり、今後、古墳時代の埋葬個体間の血縁関係の推定や、古墳時代そのものの親族構造を解明する上での基盤となる成果である。 関東の横穴墓に見られた血縁関係が他地域の埋葬墓についても普遍的に認められるかを明らかにするために、和歌山県田辺市にある磯間岩陰遺跡出土の古墳時代人骨の核ゲノム分析を試みた。具体的には、第一号石室内部から出土した男性と幼児に血縁関係が認められるか分析した。2個体から取得した核ゲノムデータを用いて血縁推定した結果、少なくとの一親等での血縁関係ではないことが明らかとなった。これは、ミトコンドリアDNAハプログループ、Y染色体ハプログループのいずれもが両者で異なっていることと一致する。今後、この2個体の詳細な血縁関係(2親等か否か)を調べるとともに、2親等以上離れた2個体が同一石棺墓に埋葬された理由について、考古学者等と議論して、総合的な理解を試みる。
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