研究課題/領域番号 |
16K18632
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西村 碧 (本井碧) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90761049)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 生理的多型 / 生理人類学 / 実験心理学 / セロトニン |
研究実績の概要 |
セロトニントランスポーター遺伝子多型によって画像に対する情動反応に差異が見られるか実験を行った。予備的に男子大学生90名を対象に画像呈示時の事象関連電位を分析した。その結果、ss型は、初期成分には対象による注意の差がないにも関わらず、複雑な認知処理を反映する後期成分において、人物画像により注意反応を示した。回避する必要のない物体に限って選択的に注意を抑制する反応は「危機回避」の観点からすれば十分適応的であると考えられる。この実験により、特定の刺激に対する注意が高まるタイミングがタイプによって異なることが示唆された。 更に、本実験として健康な日本人大学生50名を対象として画像刺激の予期を伴う実験を行った。先行する警告刺激では4種類の図形刺激を用い、後続の情動刺激にはIAPSから選定した快、不快、中立の3条件の刺激を用いた。なお快刺激と不快刺激の覚醒度は統一した。情動刺激の感情価によってそれぞれ異なる警告刺激を対応させることで、情動画像を予期可能な条件、予期不可能な条件、2つの条件とした。 結果は現在分析中であるが、後頭部の後期陽性電位(LPP:1000ms~3500ms)の振幅において、警告刺激の種類、後続刺激の情動、遺伝子タイプの3要因で交互作用が見られた。すなわち、Lアレルを持つ被験者群において、先行する図形によって予期不可能であった快刺激のLPPは、予期可能な快刺激のLPPと比べ有意に大きいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、初年度の第一実験として設定した図形画像によって後続刺激の予期を操作する実験を行った。予備的に行った画像刺激による実験の結果を海外のシンポジウムにてポスター発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を論文に取りまとめ国際誌への投稿を積極的に進める。また、計画通りレセプターに関わる他の一塩基多型等の関連についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画提出以降に所属が変更となり、適切な実験室の確保が困難であった為、今年度は人件費・被験者謝金を必要とする実験を実施しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
被験者謝金が必要な生理実験は前年度に前倒して実施しており、研究計画に変更はない。今年度に追加の遺伝子分析を行うための物品及び人件費・論文投稿費用として使用する。
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