近年、トマトにおいて単為結果性に関わる新しい制御因子が同定され分子機構が明らかにされつつあるが、その全容解明に至っていない。本年度ではフラボノイド蓄積とオーキシン輸送の関連性を明らかにするため、Slchs1/Slchs2/DR5-GUSの三重変異体を作出した。表現型解析から単為結果果実形成とフラボノイド欠損の表現型の関連性が見られたが、栄養器官の発達と単為結果果実形成の関連を明確にすることはできなかった。一方で、栄養器官の発達については、先行研究の遺伝子発現抑制個体と変異体間で違いが見られることから、その原因についても考察したいと考えている。 上記を踏まえ本年度は、研究計画を一部変更し、当初の研究計画に記載した変異体に加え、異なる単為結果性を示す新たな単為結果性変異体を研究材料として追加することとした。当該単為結果性変異体の原因遺伝子は明らかとなっていなかったため、その原因遺伝子を同定するため、次世代シークエンス解析により、候補遺伝子領域のマッピングを実施し、原因遺伝子候補の絞り込みを行った。また、当該変異体をより詳細に解析するために、戻し交配を行い、形質と連鎖していない変異を排除を継続している。今後、単為結果性変異体における形態学的解析ならびに既知の着果関連遺伝子との関連性についても調査を進めていく予定である。既知の着果関連遺伝子群との関連性の調査においては、主要遺伝子の遺伝子発現を個別に定量PCRで確認を行うと共、RNA-seq等を活用した網羅的な制御ネットワークの解析の実施を考えている。
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