研究課題
オオムギは、安定して形質転換可能な品種が「Golden Promise」(GP)に限られており、この制約が形質遺伝子の効率的な解析を妨げている。形質転換に必要な遺伝子が明らかとなれば、他の品種での形質転換も容易になると考えられる。本研究は、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な遺伝子を単離するため、形質転換が困難なオオムギ品種「Haruna Nijo」(HN)と容易な品種GPとの交配に由来する遺伝解析を用いて、(1)オオムギの形質転換に必要なゲノム領域の絞り込みならびに(2)その機能解析を行うことを目的としている。昨年度までに、HN×GPのF2から得られた形質転換体60個体(tHN×GP)を用いて、その染色体分離の歪みを検出することにより、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な遺伝子座TFA(Transformation Amenability)を3カ所検出した。本年度は、tHN×GP を用いて、Illumina社インフィニウムシステムによる高密度マーカー解析を行った。その結果、1131の新規SNPsマーカーを得ることが出来た。さらに、上記(1)(2)を遂行するための実験材料として、HNを戻し交雑親またはGPを戻し交雑親としたBC2F1世代をそれぞれ育成し、得られたSNPsマーカーを用いてTFA遺伝子座が分離するような個体を選抜した。今後、この後代を準同質遺伝子系統として展開し、(1)(2)を行う予定である。一方、GPと米国品種「Full Pint」との倍加半数体系統を用いて、TFAが形質転換に必要な遺伝子座であることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、Illumina社インフィニウムシステムによる高密度マーカー解析ならびに次年度に使用予定の実験材料の育成を行った。それぞれ研究計画の通りに進んでいる。
次年度以降、育成した準同質遺伝子系統を用いて、形質転換能のQTL解析を行う。各系統ごとの (i)抗生物質耐性カルスの増殖率、(ii)その緑色シュートの再分化効率ならびに(iii)T-DNA導入効率(GFPによる一過性発現効率)などの項目を厳密に評価することにより、3つのTFAがそれぞれどのような働きをしているのかを明らかにする。同時に、TFAの原因遺伝子の絞り込みを行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Plant Cell Reports
巻: 36 ページ: 611-620
10.1007/s00299-017-2107-2
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