研究実績の概要 |
本研究は、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な遺伝子を同定するため、形質転換が困難なオオムギ品種「Haruna Nijo」(HN)と安定して形質転換可能な品種「Golden Promise」(GP)との交配後代を用いて、(1)オオムギの形質転換に必要なゲノム領域の絞り込みならびに(2)その機能解析を行うことを目的としている。これまでに、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な3つの遺伝子座TFA(Transformation Amenability)を同定した。昨年度までに、HNまたはGPを戻し交雑親とした戻し交雑集団の中からTFA遺伝子座が分離するような個体を選抜した。一方、再分化に関わる転写因子遺伝子のBaby Boom (BBM)遺伝子およびWuschel2 (WUS2)遺伝子を単離し、それらを過剰発現する形質転換オオムギカルスを作成した。 本年度は、BBMおよびWUS2遺伝子をそれぞれ過剰発現したオオムギカルスの形態的観察とRNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。BBM遺伝子を過剰発現したオオムギカルスは、その表面に無数の茎頂分裂組織様細胞塊が形成され、WUS遺伝子の方は組織化された様な細胞塊が形成された。RNA-seq解析の結果、BBM遺伝子の過剰発現では11,704の遺伝子に、WUS2遺伝子の過剰発現では16,946の遺伝子において、それぞれ2倍以上の発現増加または発現低下が認められた。 一方で、HNとGPのエキソーム配列データを解析し、TFAにおけるInDelマーカーの開発を行った。BC2F4世代の形質転換能を確認し、さらにHNを交配したBC3F1個体を作成した。また、HNを戻し交雑親としてGP由来のTFA領域を持つBC2F4世代を圃場に展開し、その生育を調査した。今後、これらを基にTFA領域のさらなる絞り込みを行う予定である。
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