研究実績の概要 |
本研究では麦類の小花発達機構を解明するためオオムギ突然変異体の原因遺伝子の特定を行なう. ガンマ線照射によって誘発された新規突然変異体と次世代シーケンサーの活用により、これまで以上に迅速に遺伝子単離を行うことができる. すでに単離されている六条性遺伝子 (vrs1, vrs5) との組み合わせによる収量性 (粒数と粒大) への影響を検証する. 平成29年度は二条性で側列小花の発達が極端に抑制されたデフィシエンス系統の原因変異を同定し, 原著論文として発表した. VRS1タンパク質の推定リン酸化部位の1アミノ酸置換により, デフィシエンス型の側列小花が生じることを明らかにした. この変異により, 主列小花の発達が進み, 最終的な穀粒サイズが野生型より10%大きくなることがわかった. ヨーロッパではデフィシエンス型の二条オオムギの利用が進んでおり, 同定した遺伝変異はDNAマーカーとして育種利用できる. さらに, 本年度はintermedium-s.1変異体 (int-s.1) とデフィシエンス品種との交雑を行い, F2分離集団を作成した. int-s.1は野生オオムギにガンマ線照射して得られた突然変異体で側列小花が六条性に近い表現型を示す. 全てのF1個体は稔性のない側列小花を持ち, 両親と比較して中間的なサイズを示した. 96個体のF2集団を圃場条件で栽培し, 表現型解析を行ったところ, 二条性と六条性がほぼ3 : 1に分離した. int-s.1とvrs1の連鎖関係を調べるためPCRマーカーでVrs1遺伝子型を決定したところ, int-s.1とvrs1は連鎖しており, 約17 cMの組換えが生じていることがわかった. この結果からint-s.1遺伝子は第2染色体に座乗することが明らかになった.
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