研究課題
本研究では麦類の小花発達機構を解明することで収量性の向上に寄与するDNAマーカーの開発を目指す. 二倍体のオオムギでは人為突然変異誘発による変異体が多数蓄積されている。特に穀粒数の増加に直結する六条性突然変異体はvrs1からvrs5まで5遺伝子座が報告されており、すべての遺伝子が単離された. 一方で近縁のコムギは穀粒数を制御する分子遺伝機構はほとんど明らかになっていなかった。平成30年度はコムギの小穂あたり粒数を制御するQTL(Grain Number Increase 1; GNI1)を同定し、その原因遺伝子がVrs1相同遺伝子であることを解明し、原著論文として報告した。デュラムコムギとパンコムギの一部系統ではGNI-A1タンパク質のホメオドメインの一アミノ酸置換により機能低下が生じ、粒数が増加することがわかった。この変異を持つコムギ系統は圃場条件における穀粒収量が野生型より10-30%高くなることがわかった。GNI1遺伝子は穂で特異的に発現しており、特に小穂内の上位小花と小穂軸での局在が顕著であった。RNA干渉によってGNI1遺伝子の発現を抑制した形質転換体コムギは野生型よりも小花稔性が向上し粒数が増えた。Vrs1/GNI1遺伝子は遺伝子重複によって生じ、コムギ連に特異的に存在する遺伝子であることがわかった。オオムギVrs1は栽培化過程の比較的早い段階で選抜され、コムギGNI1は栽培化後に選択されてきている。これらの結果からGNI1遺伝子の育種利用が強く期待される。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 ページ: 5182-5187
10.1073/pnas.1815465116
The Plant Journal
巻: 94 ページ: 525-534
10.1111/tpj.13876
Molecular Breeding
巻: 38 ページ: 51
10.1007/s11032-018-0816-z
bioRxiv
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1101/434985