研究課題/領域番号 |
16K18637
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
津田 勝利 国立遺伝学研究所, 実験圃場, 助教 (30756408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 茎頂分裂組織 / KNOX転写因子 / BLH転写因子 / イネ / 発現制御 |
研究実績の概要 |
茎頂分裂組織(SAM)は植物の地上部全体の器官を生み出す組織である。本研究では、イネにおいてSAMの維持に不可欠なKNOX転写因子のコファクターと考えられるBLH転写因子に着目し、機能解明・下流遺伝子の同定をおこない、KNOX-BLH複合体の標的遺伝子の発現制御メカニズムを解明する。また、さらなるコファクターの同定に向けた生化学的な実験系の立ち上げ・検討をおこなう。 H28年度はイネBLH転写因子PVP1 (qSL1)、PVP2 (qSH1)の遺伝子破壊株をCRISPR/Cas9を用いて行った。二重変異体が得られたが、極度の生育異常により枯死したため、系統が保存できなかった。そこでPVP1・PVP2それぞれの単独変異体を作成しホモ個体を得た。また、平野博之博士(東京大学)からpvp1・pvp2の種子を分譲していただき、交配をおこなってpvp1 pvp2 ダブルヘテロ個体およびその自殖種子を得た。次年度は、これらの材料を用いて表現型観察をおこなう。 直接の下流遺伝子群同定にむけて、PVP1・PVP2の抗体作成を試みた。His-PVP1全長タンパク質を用いて免疫したところ、イムノブロットにおいてPVP1・PVP2ともに認識できる抗体を得た。PVP2は大腸菌における組換えタンパク質は発現が難しく、良い抗体を得ることができなかった。したがって、抗PVP1抗体を次年度以降の解析に用いる。 また、申請者が本研究開始以前から行っていたPVP1/2のトウモロコシオーソログであるBLH12/14の解析で、BLH12/14がKNOX転写因子であるKN1とin vivoにおいて直接結合するコファクターであることを証明することに成功し、KNOX-BLH複合体の生化学的解析に向けた実験系の立ち上げにおいて予想外の進展が見られた。本研究の成果は2017年3月にThe Plant Cell誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度からpvp1 pvp2二重変異体を作成して観察を行う予定であったが、発生異常が予想以上に著しく、系統の維持・適当な観察ステージの検討が困難であったため、まずpvp1・pvp2それぞれの単独変異体を作成する方針に切り替えた。幸い、ほぼ同時期に東京大学の平野博之博士からpvp1・pvp2変異体の種子を分譲していただけたため、初年度夏に交配し、冬季栽培においてダブルヘテロの自殖種子を得ることができた。したがって、表現型観察の項目は予定よりやや遅れているが、残りの研究期間を考慮するとそれほど問題にならないと考えている。むしろ圃場にて展開できる材料を得ることができたため、材料の管理がしやすくなった利点は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
pvp1・pvp2の単独変異・二重変異体を材料に表現型観察・ChIPseq/RNAseq等の実験を計画通り進めていく。 また、申請当初は、KNOX-BLH転写因子複合体のin vivoにおける相互作用を確認する実験系の立ち上げを本研究計画のサブテーマとして位置付けていたが、本研究開始前から行っていたトウモロコシにおける研究で、同項目を達成することができた。論文発表も完了し、イネにおいても同じ実験系が適用できる公算は高いため、予想外に進展したと言える。したがって、本研究期間内にさらなるコファクター同定に向けた免疫沈降系の確立を目指す。
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