茎頂分裂組織(SAM)は植物の地上部全体の器官の源となる組織である。本研究では、SAM形成・維持に不可欠なKNOX転写因子のコファクターと考えられるBLH転写因子に着目し、機能解明・下流遺伝子の探索をおこない、KNOX-BLH転写因子複合体によるSAMの制御機構を解明する。 H30年度は、pvp1/2が重度の節間伸長異常を示すことに着目し、その発生過程を詳細に観察した。まず野生型では、節間長約1cmまでは緩やかな成長曲線を示し、この間に活発に細胞分裂を行う一方、以降は急激な細胞身長を示す、二段階の成長様式を持つことが明らかになった。一方、pvp1 +/- pvp2 -/-個体では介在分裂組織が形成されるものの、節間成長の初期で失われ、分裂組織を持たない節間となった。この観察結果をもとに、野生型および変異体の節間組織を材料に、成長過程を通じたトランスクリプトーム解析を行なった結果、野生型の介在分裂組織特異的な発現を示し、pvp1/2変異体で極端に発現が低下する7つの遺伝子を発見した。これらは有力なBLH下流遺伝子候補である。この中には幹細胞制御因子として知られるものも含まれており、介在分裂組織に幹細胞が存在する可能性が示唆された。 また、東京大学・平野博之博士との共同研究では、pvp1/2変異体が示す穂の分枝異常を明らかにするためマイクロCT観察をおこなった。この結果は、本年度論文にて報告した(Ikeda et al 2019)。
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