研究課題/領域番号 |
16K18639
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小林 史典 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター 基盤研究領域, 主任研究員 (80584086)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コムギ / 縞萎縮病 / ゆめちから |
研究実績の概要 |
公開されているコムギ標準品種「Chinese Spring(CS)」のゲノム情報を利用して、まず「ゆめちから」の2D染色体上の抵抗性遺伝子Ymym座と同座にマップされている31個の連鎖マーカーの位置関係を明らかにした。その結果からYmym遺伝子座領域のゲノムサイズを推定したところ、およそ43Mbに渡る領域であることがわかった。 次に、これらのマーカーの座乗領域についてゲノム配列情報を取得し、43Mb領域内の25カ所を特異的に増幅するPCRプライマーを設計した。抵抗性品種群(ゆめちから、Ibis、Jaggerなど)、罹病性品種群(きたほなみ、Munstertaler、タマイズミなど)、CSを用いたPCR解析の結果、18個のマーカーについて罹病性品種群においてはPCR断片の増幅が確認されたが、抵抗性品種群では増幅は確認されなかった。その他のマーカーにおいては、抵抗性品種群と罹病性の「Munstertaler」で増幅が見られなかったもの(3マーカー)、抵抗性品種群と罹病性の「タマイズミ」で増幅がみられないもの(2マーカー)、「ゆめちから」とYmymの由来元と考えられる「KS831957」で増幅が見られないもの(1マーカー)、全ての品種で増幅が見られたもの(1マーカー)であった。この結果は、抵抗性品種の2D染色体上には、当初予想していた欠失の他に、何らかのゲノム構造の変異(欠失あるいは配列の変異など)が存在することを示唆した。 罹病性の「きたほなみ」より作出された突然変異体集団より、Ymym座の連鎖マーカーTNAC3152が欠失した系統(2系統)を選抜し、縞萎縮病I型ウイルス感染圃場での栽培試験を行った。その結果、2系統のうち1系統は抵抗性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は、最近整備されたばかりのコムギのゲノム情報を活用して、Ymym領域全体のゲノム構造の特異性が見えてきており、当初の調査対象であった欠失以外にも構造変異があることがわかった。この結果は当初の予想と異なる結果であり、欠失領域の特定には至らなかった。しかし、Ymym座のTNAC3152マーカーの欠失突然変異体を、当初の予定より1年前倒しで選抜し、その予備試験も行った。以上のことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Ymym領域のゲノム構造の調査を続ける。その際、国内品種のゲノム情報も利用して、Ymym領域の特異性を探る。縞萎縮病I型に対して抵抗性を示した突然変異体については、北海道のII型、福岡のIII型に対する反応を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に執行した結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合わせて有効に使用する。
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