研究実績の概要 |
Ymym遺伝子座について、H29年度に引き続き当該領域のゲノム構造を調査するために、シーケンスキャプチャー法によって取得された抵抗性品種「ゆめちから」のNGSリード(Ishikawa et al. 2018, DNA Research)を用いて、2D染色体上のYmym領域に由来するゲノム配列を構築した。その結果、「ゆめちから」の2D染色体上の5箇所について、ゲノム配列断片(それぞれ約1.1~4.8kb)の構築に成功した。これらを、Chinese Spring(CS)の2D染色体の参照ゲノム配列(RefSeq v1.0)と比較したところ、それぞれ85~97%の相同性を示した。H29年度に解析したTNAC3152領域の結果と合わせて、「ゆめちから」のYmym領域は特殊なゲノム構造であることが示された。 得られたゲノム配列とCSとの比較から「ゆめちから」型とCS型を識別できるDNAマーカーを開発し、他の抵抗性品種や罹病性品種で多型調査を行った。その結果、抵抗性品種は「ゆめちから」型、罹病性品種はCS型を示し、抵抗性品種は「ゆめちから」と同様のゲノム構造を持つことが示唆された。また、開発したDNAマーカーのうち、TNAC1216CDとTNAC3149CDは共優性マーカーであり、Ymym遺伝子の導入・選抜における有用性が確認できた。 Ymym領域の特殊性の由来を調査するために、以上のDNAマーカーを用いてDゲノムの祖先種であるタルホコムギについて多型調査を行った。その結果、調査に供試した219系統の中に「ゆめちから」と同じ多型パターンを示す系統はなかった。今回供試できなかった系統、あるいは他のエギロプス属種に由来している可能性もあり、Ymym領域の由来の解明にはさらなる調査が必要である。
|