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2017 年度 実施状況報告書

イネの根圧制御に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K18640
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

小川 大輔  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 研究員 (10456626)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード導管液
研究実績の概要

導管を介した物質輸送は蒸散流と根圧に依存し、蒸散流は気孔開閉により制御されることが知られるが、根圧の制御に関する分子機構は不明のままである。そこで私は、地上部切断時に滲出する導管液の量が根圧を反映するという作業仮説を立て研究に臨んでいる。
導管輸送能に影響する外的因子を明らかにするため、昨年確立したイネ水耕栽培実験系を用い、実験を行った。まず、温度変化に対する影響を調査した。導管液を採取するため地上部を切断し、水耕液を25℃から10℃程度の低温にすると採取できる導管液の量は半分以下に低下するが、その後25℃に戻すと導管液量は元に戻った。逆に、水耕液を25℃から40度に上げると導管液量は3-4倍まで増加し、また25℃に戻すと、採種できる導管液量は戻った。また、興味深いことに、オキシラーゼ添加により水耕液中を嫌気条件にすると導管液量が減少した。これらの結果から、導管液輸送には、適温があり、エネルギーを必要とする何らかの酵素反応によって起こっていることが示唆された。
また、植物ホルモンの効果を検討したところ、ジャスモン酸(JA)に対しては濃度依存的な滲出導管液量の低下が見られ、300micromolarでは0micromolarの時の25%になった。アブシジン酸では100micromolarのときに73%、人工オーキシンのIAAでは30micromolarのときに131%であった。このように、導管輸送が植物ホルモンにより制御されること明らかとなり、植物ホルモンが様々な局面でメッセンジャー物質として作用することを考えると、この結果は容易に受け入れられる。最も効果の高かったJAを投与した際の地上部への影響を調べるため、サーモグラフィー撮影をしたところ、地上部の葉面温度が増加した。このことは、地下部のJAが地上部の気孔に作用したと考えられ、その作用に根圧が寄与した可能性が推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

シュート地上部の生重量と導管液滲出量に相関が見られることから、シュート生重量を指標に根圧に影響するイネの遺伝因子の同定を、イネ品種「ルリアオバ」と「タチアオバ」の単交配集団を用いて進めている。それには、準同質遺伝子系統の作出が必要であるが、交配実験が成功せず、遺伝因子の絞り込みが進んでいない。

今後の研究の推進方策

導管液輸送に関わる外的、内的要因の同定をさらに進め、植物の長距離輸送のメカニズムの一端を明らかにすることを目指す。「ルリアオバ」と「タチアオバ」の単交配集団を用い明らかとなった根圧に関わるQTLの領域を狭める。そのために必要なイネ材料を圃場で栽培し採種する。また、水耕環境を簡単に変えられる水耕栽培の利点を生かし、様々な環境下での導管液採取実験を検討する。今年度、オーキシンにより導管液輸送が活性化する作用を持つことが明らかとなった。オーキシンはプロトンポンプの制御に関わることが知られており、導管液輸送においてプロトンポンプがどのような立ち位置にあるのかについて調査する。

次年度使用額が生じた理由

「ルリアオバ」と「タチアオバ」の単交配系統群を用いた遺伝解析により見出されたQTLの絞り込みにDNAマーカーが必要なため費用を計上する。次年度は、実験に用いる物品の購入を中心に直接経費を使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Haplotype-based allele mining in the Japan-MAGIC rice population2018

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Daisuke、Yamamoto Eiji、Ohtani Toshikazu、Kanno Noriko、Tsunematsu Hiroshi、Nonoue Yasunori、Yano Masahiro、Yamamoto Toshio、Yonemaru Jun-ichi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 4379

    • DOI

      10.1038/s41598-018-22657-3

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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