本研究は、凍結に対して感受性であるバレイショ栽培種(Solanum tuberosum)と耐霜性野生種2種(S. commersonii、S. acaule)の植物体に含まれるタンパク質の比較解析により、供試する野生種の持つ耐霜性に関わるタンパク質を特定することを目的とする。 試験管培養した植物体をポットで生育させて行う実験では、バレイショ栽培種及び耐霜性野生種2種の葉から可溶性画分と細胞膜画分を調製し、それぞれに含まれるタンパク質の種間比較を行うと共に、低温馴化前後での種内変化を調べた。まず、前年度に行った可溶性タンパク質についてのプロテオームデータの再解析を行った。その結果、活性酸素除去への関与が予想される複数のタンパク質が耐霜性野生種2種で特徴的に蓄積していることが示唆された。次に、調製した細胞膜画分についてSDS-PAGEにより組成比較を行った。それぞれの種において、低温馴化前後で1~2本のタンパク質バンドの量的な変化が観察された。今後、質量分析によりこれらのタンパク質の同定を行う。 ミニチューバーを扱う実験では、前年度から引き続き、気耕栽培による耐霜性野生種のミニチューバーの作出を試みた。しかし、供試した2種の野生種では、水耕液の組成や日長条件を変えてもミニチューバーを得ることはできなかった。そこで、長崎県農林技術開発センターで作出された耐霜性育種系統を入手し、それ用いてミニチューバーの作出を試みた。本系統は、S. tuberosumと同様の条件でミニチューバーを形成した。しかしながら、植物体一株に4個程度の塊茎ができたのみで収量が非常に低く、今後、一株当たりの塊茎数を増やす方法を検討しなくてはならない。
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