研究課題/領域番号 |
16K18642
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原 尚資 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20721426)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日長反応性相同遺伝子情報 / 生態型分化モデル集団 |
研究実績の概要 |
本研究は、ソバの収量性向上および安定性に寄与する日長反応性と生態型において、ゲノム解析を実施することでその関連性を明らかにし、ソバにおける生態型デザイン育種の可能性を探るものである。本年度においては、ゲノム情報が不足しているソバにおいて、既存cDNAライブラリーに対する次世代シーケンサーによるRNA-seqを行うことで1.日長反応性相同領域の完全長塩基配列情報収集と、長日条件栽培により秋型集団が中間型を経て夏型集団へと分化したとする生態型分化仮説の過程を再現した集団を作製するために、2.秋型および中間型集団の長日条件下選抜集団の作製を実施した。 その結果、 1.シロイヌナズナやイネ等において確認されている、日長反応性遺伝子配列と高い相同性を有する日長反応性相同遺伝子領域を現時点において34領域確認した。またこれらのうち複数の領域において完全長塩基配列情報を収集することに成功した。 2.秋型集団を15時間の長日条件下で栽培すると、集団内の各個体における第一花開花まで日数は播種後26日~84日、中央値56日という様態を示した。また、短日要求性の高い個体である開花まで日数の遅い個体では稔実種子数の減少傾向が認められた。同様に中間型集団では、第一花開花まで日数は23日~71日、中央値32日の分布を示し、秋型集団程ではないものの短日要求性の高い個体では稔実種子数の減少傾向が認められた。このように集団内個体間において、長日条件への適応度において明確な差異が生じていることから、各集団において短日要求性が低く稔実種子数が多い個体を選抜した。本年度はこの選抜を2回行った。 これらの日長反応性相同遺伝子領域のゲノム情報、および長日条件下選抜集団を用いることで、次年度において日長反応性と生態型および生態型分化において、ゲノム解析を実施することが可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち1.日長反応性相同領域の完全長塩基配列情報収集においては、次世代シーケンサーによる既存cDNAライブラリーの塩基配列情報収集に着手し、日長反応性相同遺伝子領域の完全長塩基配列情報の収集が進捗しており、2.秋型および中間型集団の長日条件下選抜集団の作製では、4回の選抜を実施する計画において、実際に適応度に差異が生じる長日条件下での選抜を2回実施した。これらのことから初年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成29年度は、1.日長反応性相同遺伝子領域の完全長塩基配列情報の収集をさらに進める、2.秋型および中間型集団に対する長日条件下での選抜をさらに実施する。これにより3.既存生態型集団および長日条件下選抜集団に対する日長反応性相同遺伝子のゲノム解析および分子集団遺伝学的解析を行い、日長反応性と生態型の関連性および日長反応性による生態型分化の遺伝的機構の解明を実施することで、ソバにおける生態型デザイン育種の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーを用いたRNA-seqを当初計画では外部委託で実施する予定であったが、新たな次世代シーケンサーが販売されたことで、1回当たりの費用を下げることが可能になったとともに、外部委託する必要性が無くなった。本年度はこの新たな次世代シーケンサーの有効性検証のため、1回のRNA-seqのみしか実施していないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサーにより獲得される総データ量の増加、および塩基配列決定精度の向上のためには、さらに複数回のRNA-seqが必要である。従って「次年度使用額」はH29年度に実施する複数回のRNA-seq等に使用する。
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