研究課題/領域番号 |
16K18647
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松本 和浩 静岡大学, 農学部, 准教授 (60508703)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンゴ / 果実品質 / 生理障害 / 栽培技術 |
研究実績の概要 |
弘前大学藤崎農場で育成した新奇斑点状生理障害の発生するタイプ2の赤果肉リンゴ品種’紅の夢’を対象に、簡易発生防止法の確立に向け昨年度に引き続き主として2つの実験を行った。 まず、今年度は秋季の気象条件が比較的低温で推移したためか、斑点状障害の発生が全体的に少なかった。そのため、これまでの斑点状障害の発生程度での5段階評価を改め、1果当たりの斑点の数で評価を行った。 昨年に引き続き行った光非透過1重袋を使った除袋の労力半減を狙った実験では、慣行の2重袋同様、果実にほとんど斑点状障害は発生しなかった。また、除袋時に日焼け等の発生も確認できなかった。果実重、果肉硬度は、無処理区、2重袋区と差異はなく、糖度および酸度は対照区に比べやや低下するものの、2重袋区とは差異は見られなかった。一方、果肉着色は対照区、2重袋区に比べ向上しなかったものの、果皮着色は対照区に比べ向上した。これらのことから、判定上障害の発生抑制を目的とした1重袋の利用は実用技術として2重袋同様、利用可能であることが示された。 また、さらなる労力の削減を図るために行った熱ストレス耐性を付与する資材の散布では、6月処理で無処理に比べて有意に斑点状障害の発生を抑制する効果が見られた。また、果実重、硬度、糖度、酸度、果皮色、果肉色などには対照区と大きな差異は見られなかった。このように、斑点性障害の発生の抑制の可能性が示されるとともに、本処理は通常の薬剤散布と同様の立ち木全面散布で行えるため、有袋栽培に比べ大幅な労力削減になるが、効果の検証のためには再度、障害多発年における効果の検証が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前任地の弘前大学に私の後任の先生が着任され、協力して研究を行える体制が組めたことから、昨年に引き続き光非透過1重袋を使った省力化処理の実験を行い、2重袋と同様の効果があることを明らかにした。また、熱ストレス耐性を付与する資材の散布を行い、効果が得られる可能性が示唆された。これらの結果から、初年度の私の異動に伴う研究の遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
熱ストレス耐性を付与する資材の散布効果を再度確認する。また、発生のメカニズムの解明に向けて斑点状障害の形成過程について、有袋果、無袋果、親品種である紅玉や赤色親系統Ⅰとの比較試験を、障害の発展ステージごとの組織切片を作成して行い、可能であれば細胞壁成分の差異の調査も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
気象条件により、本研究の対象となっている生理障害の斑点状障害の発生が極めて少なかったため、当初予定していた分析の実施が行えず、次年度に行う予定となったため。また、論文を投稿しアクセプトされたもののの、論文掲載料等の支出が年度中になく、次年度に請求される見通しであるため。
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