研究課題/領域番号 |
16K18648
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
王 寧 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90730193)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腋芽 / トマト / マッピング |
研究実績の概要 |
今年度は、abs1及び野生型の全ゲノムリシークエンシングを行った。SNPs全体の9割が集中する12番染色体に対して全染色体をカーバーするようにDNAマーカーを作成し、その他の染色体に短腕と長腕にアンカーマーカーを作成した。作製したマーカーは全ての染色体、特にEMS処理で誘導されたSNPsが集中している場所は全て網羅できる。しかし、脇芽の形質は栽培環境の変化に大きく左右される。より確かな結果を求めるためにF2個体を複数回栽培を行い、QTL解析の結果を比較した。その結果、12番染色体に寄与率が0.7%のマイナーQTL、3番染色体の長腕に表現型と有意に相関する遺伝子座を発見した。更に、3番染色体長腕のアンカーマーカー周辺に多数のDNAマーカーを設計した。QTL解析を行った結果、寄与率が43%のメジャーQTLを発見した。3番染色体長腕の候補領域を詳細に解析した結果、核膜孔構成タンパク質をコードする遺伝子にミスセンス変異が挿入されていることを明らかにした。今後、ファインマッピングなどを行い、表現型と候補遺伝子の遺伝型の相関を確認した上で機能解析へと進めていく予定である。 また、abs1と相反表現型を示す脇芽が大きく生長できる変異体Shot Pedicle Length 1(SPL1)を発見した。spl1は単一劣勢遺伝子に支配され、一方でabs1がWTと交配した際に変異型が優性を示したので、spl1とabs1変異体はそれぞれ異なる遺伝子によって支配されていると考えられる。spl1とabs1を交配した二重変異体において、両遺伝子ともに変異アレルがホモ接合の場合は脇芽が大きく成長するspl1の表現型が完全優勢として現れたことから、SPL1はABS1の上流に位置すると考えられる。これらの結果は第14回国際ナス科学会(2017年9月・スペインバレンシア)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予期していないこと 3番染色体の長腕に表現型と有意に相関する遺伝子座を発見し、結果を確かめるためにH29年度にF2集団100個体と150個体2回栽培し、再度連鎖解析を行った。いずれも発芽率が悪く、発芽する時間が通常の数倍がかかった。 3番染色体長腕のDNAマーカーを用いた遺伝型解析を行い、生き残ったF2個体の多くはabs1変異アレルかヘテロ接合体であることがわかった。カイ二乗検定の結果、期待した分離比から大きく乖離した。他の染色体に座上するDNAマーカーは3:1の分離比に適合する結果となった。 WTの脇芽に比べ、abs1とF1の脇芽の長さは有意に短いことが観察された。F2個体の多くは腋芽が小さいabs1変異体の表現型を示し、3番染色体長腕のDNAマーカーで決めた遺伝型と連鎖することが示唆された。 また、供試個体の脇芽成長は栽培環境の影響を受けやすく、調査が難航した。マイクロトム野生型は個体差の少ない遺伝的に均一な状態であるはずだが、実際に脇芽サイズのばらつきが大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
栽培条件によって遺伝的に均一な状態である系統でも大きくばらつくので、環境による影響を抑えるための努力は欠かせない。これまでに4×4の育成ポットに間引きして8個体を均一に配置して栽培してきた。育苗期間の後により大きいサイズ(直径10 cm)のポットに移植した場合は、WTとabs1表現型の違いは明確であり、根系の発達程度が地上部に大いに影響した結果となった。よって、F2集団栽培する場合には直径10 cmのポットを使用して表現型調査を行う予定。 頂芽を切り取るとすぐ下方の側芽が新しい頂芽となり成長し始めることは頂芽優勢として知られている。頂芽優勢のメカニズムにおいては、植物ホルモンのオーキシンが重要な働きを担っていることが知られている。abs1変異体が摘心後に脇芽成長が促進されるので、頂芽に過剰なオーキシン合成されていること考えられる。今後、マイクロトムオーキシン応答性レポーターライン(DR5レポーター)と交配し、GUSの応答パターンからオーキシン分布について調査する予定。 また、遺伝型と表現型相関が有意に相関する3番染色体長腕の既存マーカーの近傍に新たなDNAマーカーを開発し、大規模集団を用いて候補領域のファインマッピングして遺伝子を絞り込む。候補遺伝子の機能解析すると共にオーキシン生合成遺伝子の関連について調べる。
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