本研究課題では、培養した砂じょう(果肉部分)を用いて、光照射、低温および水分ストレスなどの要因により、植物ホルモン、二次代謝産物およびそれらに関連する遺伝子発現が、どのように応答し調節されているのかを明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、植物ホルモンをカンキツ培養砂じょうに処理することにより、フラボノイド蓄積と植物ホルモンの関係、植物ホルモンの相互作用を明らかにするため、マイクロアレイを用いて関連遺伝子の発現解析を行った。 植物ホルモンの処理後72時間では、対照区と比較してサリチル酸処理区で総フラボノイド含量が高かった。特に、フラバノンのヘスペリジンとナリンギンの含量が高い値を示した。また、サリチル酸処理区では、マイクロアレイによる遺伝子発現解析から、CitCHS2のmRNAレベルが対照区と比較して高い値を示した。一方、ジャスモン酸処理区では対照区と比較して総フラボノイド含量が低かった。特に、フラバノンのヘスペリジンとロイフォリンの含量が低い値を示した。また、ジャスモン酸処理区では、CitUFGT1およびCitUFGT2のmRNAレベルが対照区と比較して低い値を示した。さらに、植物ホルモン間では、サリチル酸処理区においてジャスモン酸生合成関連遺伝子のmRNAレベルが低く、ジャスモン酸処理区においてサリチル酸生合成関連遺伝子のmRNAレベルが低かった。 以上の結果から、カンキツ培養砂じょうにおいてサリチル酸処理がフラボノイドの生合成を促進し、ジャスモン酸処理が抑制すること、また、これらの植物ホルモンは拮抗的に作用することが示唆された。
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