研究課題/領域番号 |
16K18653
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
上吉原 裕亮 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (00758394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 香気成分 / 配糖体化 / グリコシルトランスフェラーゼ / トマト |
研究実績の概要 |
芳香を有する揮発性成分は、園芸作物の香り形成や食味決定に深く関わっている。特に果実の場合、“香り”は品質を左右する重要なファクターである。本研究では、果実における香気成分の貯蔵メカニズムを解明することを目的とし、トマト果実の香気成分の配糖体化に関わるグリコシルトランスフェラーゼ (UGT)の同定および機能解析を行う。 平成28年度は、候補UGTの探索を進めた。UGT遺伝子はトマトゲノム上に200以上あり、それぞれが植物ホルモンや二次代謝産物の配糖体化に関わっていると考えられるが、多くのUGTは生体内における実際の基質は明らかになっていない。本研究では、香気成分の配糖体化を行うUGTを明らかにするために、二つの異なる手法を用いた。第一に、果実において遺伝子発現量の高いUGT遺伝子を約30選定し、大腸菌内で組換えタンパク質を発現させ、香気成分に対する配糖体化活性の有無を調べた。その結果、複数のUGTが香気成分の配糖体化活性を持つことが明らかになった。たとえば、未熟果実において高発現を示すいくつかのUGTは、スモーキーフレーバーを醸す香気成分(グアイアコール、オイゲノール)に対する活性を示した。また、低温貯蔵した成熟果実において強く発現するUGTは、フェニルエタノール(フローラル香)やヘキサノール(グリーン香)など、トマトの香り形成に重要な化合物に対する活性を有していた。第二のアプローチとして、果実に含まれる配糖体型香気成分量の品種間差異を調べた。配糖体量の多い品種群と少ない品種群におけるUGT遺伝子発現量を比較することで、目的のUGTを同定する戦略である。本年度は、国内外のさまざまなトマト品種を供試した。予想した通り、品種によって多様な香気成分の配糖体化パターンが検出された。この差異がUGT同定の手掛かりとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は研究実施計画に掲げた通り、主に香気成分の配糖体化を行うグリコシルトランスフェラーゼ (UGT)の候補探索を行った。異種細胞発現系で得たタンパク質を用いた試験により、複数の候補UGTが同定された。また、トマトの品種間・系統間の配糖体型香気成分量の差異を検証したところ、品種によって異なる配糖体量を有していることが明らかになり、次年度以降の網羅的遺伝子発現解析の供試材料として有望な結果が得られている。ただし、配糖体量は環境の影響を受けやすく、本年度の結果だけでは判定が難しいため、次年度も継続して試験する必要がある。総じて当初の研究計画通りに進行している。なお、これらの成果については、平成28年度園芸学会秋季大会小集会および平成29年度同学会春季大会にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も研究実施計画通りに実験を遂行する。組換えタンパク質を用いた試験により得られたUGTが真にトマト果実内でそれぞれの香気成分の配糖体化に関わっているかどうかを検証するために、形質転換体を作成し配糖体量への影響を調べる。また、平成29年度は引き続き様々なトマト品種における配糖体量を調べる。平成28年度に供試した品種の再現性を得るとともに、新たな品種を供試し、後に行う網羅的遺伝子発現解析の材料として新たな候補品種を探索する。
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