病原体は感染時に宿主から炭素源として糖を吸収する。しかしその一方で、病原体の糖摂取に対して植物が防御策を備えているかは不明であった。われわれは、シロイヌナズナの吸収型の糖トランスポーターSTP1およびSTP13が病原細菌に対する抵抗性に寄与することを見出した。さらに、STP13が病原体認識受容体FLS2およびその共受容体BAK1と相互作用し、485番目のスレオニン残基がリン酸化され、その糖輸送活性が促進されることを示す結果を得た。そして、485番目のスレオニン残基を非リン酸化残基であるアラニン残基に置換したSTP13は、野生型STP13と異なり、stp1 stp13変異植物の細菌抵抗性の低下を相補できなかった。以上の結果より、植物は細菌感染時にリン酸化を介してSTP13を活性化し、細胞外の糖含量を低下させることで細菌の糖摂取を阻害していることが示された。そして次に、糖トランスポーターの制御による細胞外の糖含量の低下が、どのように病原細菌の感染に影響を与えているかを調べた。病原細菌は感染時に糖の認識を刺激として宿主の防御応答を抑制する病原性因子を分泌する。そこで、病原細菌の病原性因子の分泌量を調べたところ、野生型植物に感染した際に比べて、stp1 stp13変異植物に感染した際には病原細菌の病原性因子の分泌量が増加していた。また、野生型のSTP13をstp1 stp13変異体に導入することで病原性因子の分泌量の野生型植物に感染した際のレベルまで減少したが、リン酸化部位を破壊したSTP13の導入では抑制できなかった。これらの結果より、糖トランスポーターの制御による細胞外の糖の減少は、病原細菌の病原性因子の分泌を抑制し、感染力の低下を引き起こすことが示された。
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