研究課題/領域番号 |
16K18657
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
大崎 久美子 鳥取大学, 農学部, 講師 (20432601)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 誘導抵抗性 / きのこ / 揮発性物質 |
研究実績の概要 |
きのこ由来揮発性物質を用いた新たな植物病害防除技術の確立を目指し、多種多様なきのこ由来揮発性物質の中から組み換えタバコ植物を用いて植物病害抵抗性誘導活性を示す物質の選抜を行った.まず,9属37種50菌株のきのこ菌株の培養ろ液から有機溶媒抽出法によって粗揮発性物質を抽出した.次に2種類の組み換えタバコ植物(抵抗性遺伝子PR1a, PI-IIプロモーターとGUSレポーター遺伝子との融合遺伝子をそれぞれ導入したタバコ植物)の切り取り葉に粗揮発性物質を処理し,視覚的に抵抗性遺伝子が発現しているかどうかを評価し,抵抗性誘導活性を持つ物質の選抜を行った.その結果,50種類のきのこ由来粗揮発性物質中で8種の粗揮発性物質が対照区と比較して顕著な抵抗性誘導活性が認められた.8種中の2種がPI-II導入タバコ植物に対して誘導活性が示され,ジャスモン酸・エチレン系抵抗性経路を活性化する物質であることが示唆された.一方,残りの6種はPR1a導入タバコ植物に対して誘導活性が示され,サリチル酸系抵抗性経路を活性化する物質と考えられた.なお,両方の組み換えタバコを活性化する物質は見出せなかった. また,昨年度に引き続き,これまでの研究において植物病原菌に対して抗菌活性を示すブナハリタケ由来揮発性物質1-phenyl-3-pentanoneにおける抵抗性誘導活性を検討した.トマトに本物質1000ppmを暴露処理2日後に,トマト灰色かび病菌(Botrytis cinerea)を接種し発病抑制効果を調べた結果,無処理区と比較して発病抑制は認められなかった.そのため,本物質は植物病害抵抗性誘導活性を持っていないことが明らかとなった. さらに,シイタケおよびブナシメジの廃菌床から放出される揮発性物質処理によってキャベツに抵抗性誘導活性が認められ,この研究成果の一部を日本きのこ学会誌に論文発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年9月より産休および育休から復職したため,平成29年度の計画を7カ月で実施した.おおむね計画通りに実施することができ,さらに平成30年度の計画の一部も実施することができた.当初はきのこ揮発性物質20種を目標にしていたが,大幅に上回る50種のきのこ揮発性物質より抵抗性誘導活性を有する物質の探索を行うことができた.その結果,抵抗性誘導活性を有する候補物質8種を選抜することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験ではGUS染色により視覚的に抵抗性を発現しているかを簡易的に評価し8種の粗揮発性物質において抵抗性誘導活性が認められた.しかし,視覚的に評価しにくい状況もあったため,今後は,50種の揮発性物質処理した組み換えタバコ葉におけるGUS活性を吸光度計により測定し,抵抗性誘導活性を詳細に評価する予定である.また今回,選抜された8種の粗揮発性物質をタバコ野生型に処理し,抵抗性関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析することにより,詳細な抵抗性誘導経路の解析を行っていくことが重要であると考えている.また,誘導活性が認められたきのこ由来粗揮発性物質の精製を進め,候補物質の化学構造の解析を行っていく.
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