研究実績の概要 |
きのこ由来揮発性物質の中から植物病害抵抗性誘導活性を示す物質を明らかにするため、35属48種60菌株のきのこ菌株の粗抽出物を抵抗性遺伝子PR1aおよびPI-IIプロモーターとGUSレポーター遺伝子との融合遺伝子を導入した2種類の組み換えタバコに処理し、GUS活性を指標に選抜した。その結果、きのこ8菌株の粗抽出液処理した抵抗性遺伝子導入タバコにおいて、対照区と比較して顕著なGUS活性が認められた。きのこ8菌株の粗抽出液をタバコ野生型に前処理し24時間後にBotrytis cinerea 胞子を接種し発病抑制効果を調べた。その結果、きのこ5菌株の粗抽出液処理によって対照区と比較して50%以上の発病抑制効果が認められ、これら粗抽出液中に植物病害抵抗性誘導活性を有する物質が存在していることが示唆された。次に、きのこ5菌株のうち発病抑制効果が高かった2菌株の粗抽出液をタバコ野生型に処理し24時間後の抵抗性関連遺伝子(PR-1, PR-2, PI2, PRB)の発現量をリアルタイムPCRで解析した結果、対照区と比較してこれら全ての遺伝子発現が向上していた。なお、抵抗性誘導活性を有するきのこ5菌株のうち4菌株の粗抽出液はB. cinerea 胞子発芽に対して90%以上の抑制効果も認められた。抵抗性誘導活性を有するきのこ粗抽出液より抵抗性誘導物質の同定を現在、行っている。 また、既に同定した各種きのこ由来揮発性物質における抵抗性誘導活性を調査した結果、顕著な抵抗性誘導活性を示す物質は見出せなかったが、各種植物病原菌および病原細菌に対して高い抗菌活性を示す物質を明らかにした。さらに、各種きのこ廃菌床から放出される揮発性物質の前処理によりArabidopsis葉へのAlternaria brassicicola感染が抑制されることを明らかにし、廃菌床から放出される揮発性抗菌物質6種を同定した。
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