研究実績の概要 |
植物ホルモン受容体結合化合物に関して、最終年度はケミカルアレイの手法により単離されたアブシジン酸(ABA)受容体のアンタゴニストRK460(Ito et al., ChemBioChem 2015)に注目して研究を進めた。これまでの研究において、ABA受容体アンタゴニストで受容体に特異性のあるものは報告がなかったが、RK460はシロイヌナズナの中で14種類存在するABA受容体のひとつ、PYR1に特異的なアンタゴニストである。RK460の立体異性体を合成し、11種類のシロイヌナズナABA受容体に対するアンタゴニスト活性を評価したところ、アンタゴニスト活性を有し、受容体選択性の異なる異性体を明らかにした。さらにRK460の酸素原子を炭素に置き換えた炭素置換体を合成し活性評価を行ったところ、アンタゴニスト活性が減少したことから、分子内酸素が活性発現に重要であることが示唆された。また側鎖を置換した誘導体を合成し、その活性を評価することで、側鎖の立体的要因や長さの違いで、選択性および活性の強さが制御できることが示唆された。これにより、RK460のアンタゴニスト活性および受容体選択性に重要な立体構造がそれぞれ明らかとなってきた。また合成した(+)-RK460が植物に対して限定的な活性を示すことも分かった。
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