研究課題
本研究では、土壌から抽出された微生物集団を異なる土壌に移植することで、細菌叢形成に影響を与える生物的因子と環境因子の特定を試みた。黒ボク土(A土)および褐色森林土(B土)の2種類の土壌を段階的に混合することで、両土壌を連続的に繋ぐ人工土壌を創出した。それぞれの滅菌混合土壌にA土またはB土から抽出した微生物集団を移植することで、新たに定着する細菌叢にどのような変化が起きるのかを観察した。移植後の生菌数を測定した結果、全ての混合土壌において微生物集団は良好な定着性を示し、半年間以上は有機物添加無しで10の8乗(CFU/g)を超える高い菌密度を維持できることがわかった。またA土の含有率が高い混合土壌ほど、(1)生菌数が高くなる、(2)放線菌群の占める割合が高くなる、などの傾向が観察された。AB両土壌から抽出された微生物集団のどちらを移植した際にも同様な結果が得られたことから、細菌叢形成における土壌環境因子の強い影響が示唆された。さらにA土に移植された微生物集団は長期間経過しても元の細菌叢構造を再構成できないことが明らかとなり、A土特有の細菌叢の復元には何らかの要素が必要であることが示された。一方で、元の細菌叢を属レベルで再構成できるB土では、swarmingやglidingといった移動性の高い分類群が移植後に優占することから、これら菌群の増殖が後の細菌叢形成に重要であると予想された。そこで土壌環境からのswarming細菌を分離して様々な細菌株と共培養を行なった結果、swarming細菌は相手株の土壌における生育を促進する効果があることが認められた。これらの結果は、細菌群間の逐次的増殖関係性(Sequential growth network: SGN)が細菌叢形成において重要であることを示唆しており、将来的にSGNを利用した特定細菌叢への誘導技術が期待できる。
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Microbiology
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10.1099/mic.0.000801
環境バイオテクノロジー学会誌
巻: 18 ページ: 15-20