研究課題/領域番号 |
16K18667
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西田 翔 中央大学, 理工学部, 助教 (40647781)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物栄養 / 環境応答 / エキソン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、これまでに研究代表者が独自に見いだしてきた、無機栄養欠乏に応答してmRNAのエキソン構造が変化するシロイヌナズナ由来の遺伝子群を対象に、無機栄養状態に応答してエキソン構造が変化することの生物学的意義を明らかにし、「エキソンの組合せ制御」という植物の新しい栄養応答機序を立証することを目的としている。 本年度は、カリウム欠乏に応答してエキソンの構造が変化する転写因子「MYB59」の欠損変異体の解析を行った。変異体は低カリウム条件下において野生型よりも顕著な生育の低下を示し、さらに典型的なカリウム欠乏症である旧葉における黄化をを示した。この時、変異体の地上部におけるカリウム濃度は野生型のそれの50%程度であり、一方、変異体の地下部においては野生型と同程度か、むしろ変異体で高い値となった。以上のことから、変異体は根から地上部へのカリウム輸送に欠陥が生じているものと考えられた。 続いて、根を対象にRNA-Seq解析を行った結果、複数のカリウム輸送体遺伝子の発現が野生型と比較して変異体で有意に低下していることが明らかとなった。特に、根から地上部へのカリウム輸送を担う二種類のカリウム輸送体「SKOR」と「NRT1.5/NPF7.3」の両遺伝子の発現量が変異体において有意に低下しており、これが原因で変異体地上部のカリウム濃度が低下しているものと考えられた。以上のことから、MYB59はSKORとNRT1.5/NPF7.3の転写制御を介した低カリウム 条件への応答に関与していることが明らかとなった。 前年度収集した、栄養に応答してエキソン構造が変化するMYB59以外の遺伝子の変異体について、ホモ系統を確立し、表現型解析の準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における変異体解析により、MYB59が低カリウム応答に必須であることが示されたため、計画を一部変更し、MYB59の変異体にMYB59の3種類のスプライシングアイソフォームをそれぞれ導入した組み換え植物体の作成を始めた。このことを含め、実験は計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
MYB59の変異体にスプライシングアイソフォームを導入した組み換え植物体を確立し、これらの植物の低カリウム条件における生育、カリウム濃度、およびSKOR、NRT1.5/NPF7.3の発現量を変異体、野生型と比較することで、MYB59におけるカリウム条件に応答したエキソン構造の変化とスプライシングアイソフォームの機能の違いとの関係性を調査する。また、MYB59のスプライシングアイソフォームにGFPタグを融合したキメラタンパク質を発現する組み換え植物体を作成し、Chip法によりMYB59がSKOR、NRT1.5/NPF7.3の転写因子であるかどうかを検証する。MYB59以外の遺伝子についても、変異体解析を進め、新たな栄養応答関連遺伝子の発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、MYB59は根から地上部へのカリウム輸送に関与する遺伝子を制御することが変異体解析により推測されたため、根だけを対象にRNA-Seq解析を行い、当初の計画にあった地上部を対象にしたRNA-Seqは行わなかった。そのため、予算に余剰が生じた。これまで無菌操作および遺伝子組み換え実験に必須であるオートクレーブを他研究室に借りていたため、次年度に新たに購入する。
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