研究課題/領域番号 |
16K18670
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
解良 康太 東北大学, 工学研究科, 助教 (30644546)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / バイオフィルム / ポリアミン / c-di-GMP / 二成分制御系 |
研究実績の概要 |
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803は、環境変化に適応して生育することができるモデル光合成細菌である。本研究では、我々が見出した塩ストレス条件下でSynechocystis sp. PCC6803がバイオフィルムを形成する性質に着目し、シグナル分子生合成酵素に着目し、その制御機構を解明することを目的とした。 シグナル分子としてc-di-GMPとポリアミンに着目し解析を進めた。c-di-GMP生合成酵素として前年度から解析を進めている二成分制御系Hik12-Rre2、Hik14-Rre8について酵素活性測定及び、リン酸基リレーの解析を行った。その結果、Rre2の推定リン酸化部位に変異を導入した疑似リン酸化変異体においてc-di-GMP生合成活性が上昇した。このことから、Hik12-Rre2がリン酸化状態を介してc-di-GMP生合成活性を制御していることが示唆された。また、放射性同位体標識ATPを用いてHik12-Rre2のリン酸基リレー解析を行った。自己リン酸されたHik12に対し、Rre2を加えたところ時間依存的にHik12のリン酸化レベルの低下が観察されたことから、Hik12-Rre2のリン酸基転移が示唆された。 ポリアミン生合成に関してはAdc1、Adc2の酵素機能解析を進め、塩ストレス時のポリアミン生合成制御機構について解析し、Jouranl of Bacteriologyにて成果報告を行った。Adc1、Adc2の精製酵素について、NaCl濃度依存的に活性が上昇することを明かにした。Synechocystis sp. PCC6803は塩ストレス条件下でスペルミジンの生合成量が減少し、バイオフィルム形成が促進されることから、ポリアミン生合成がAdc1、Adc2より下流の段階で制御されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリアミンの生合成制御機構については、本研究により塩ストレス応答におけるポリアミン生合成の制御段階がプトレシン生合成、及びスペルミジン生合成の段階であることが示唆されたため、研究の進展があったと考える。一方、二成分制御系のリン酸基リレー解析においてRre2のリン酸化状態を直接検出することができなかった。また、解析の過程で予期しない非特異的なリン酸化タンパク質が検出されたことから、この非特異的なバンドを特定又は排除するために条件検討している。しかし、これまでにリン酸基リレーを間接的に示す結果を取得していることから、リン酸基リレーを介したc-di-GMP生合成制御が起こっていると考えており、現在はこれを裏付けるための追加実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
Synechocystis sp. PCC6803のプトレシン生合成酵素、スペルミジン生合成酵素を同定、機能解析し、Synechocystis sp. PCC6803のポリアミン生合成経路を同定すると同時に、塩ストレス条件下におけるポリアミンの生合成制御機構の解明を発展させる。また、Synechocystis sp. PCC6803のc-di-GMP合成酵素について二成分制御系以外のものについて研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】解析対象の二成分制御系の内、Rre8の活性を検出することの時間を要している。このために使用予定の試薬を購入することを見送った。また、ポリアミンの分析について、共同研究を進めることにより、自身で分析系を立ち上げる必要がなくなり、そのために計上していたHPLCの消耗品、標準物質を購入することが節約できたため。 【使用計画】酵素活性解析、リン酸基リレー解析について遅延している実験及び追加データを得るための消耗品として使用する。また、これまでに得られた結果から、シアノバクテリアのポリアミン生合成経路について解析するための安定同位体試薬、細胞内のc-di-GMP量を定量するための内部標準を調整するための費用として使用予定である。
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