• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

トランスクリプトームによる糸状菌環境応答能の解明とその基盤情報整備

研究課題

研究課題/領域番号 16K18671
研究機関千葉大学

研究代表者

高橋 弘喜  千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60548460)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード糸状菌 / トランスクリプトーム / 環境ストレス / 菌糸
研究実績の概要

微生物の環境ストレス応答を分子レベルで明らかにすることは、菌の生育を人為的に制御するための非常に有益な知見となる。本研究では、病原糸状菌アスペルギルスフミガタスの環境ストレス応答に関わる遺伝子の探索を次世代シーケンサーと情報解析を駆使して実現し、糸状菌の転写ネットワークを包括的に解明するとともに、糸状菌の遺伝子発現応答を体系化することを目的としている。平成29年度は、菌糸における環境ストレス時のトランスクリプトームデータ解析を進めた。具体的には、熱ストレス、酸化ストレス、浸透圧ストレス付与後3時間までの短時間に起こる発現応答に着目して、これまでに取得したRNA-seqの情報解析を進めた。その結果、各環境ストレスに応答する遺伝子群を同定し、転写応答の全体像を把握することができた。熱ストレス時には、徐々に発現応答が起こるのに対して、酸化ストレス、浸透圧ストレスでは、一過的な発現変動を示すことを確認した。興味深いことに、抗真菌薬の標的経路の遺伝子群が、酸化ストレス、浸透圧ストレス下で発現減少することを見出した。このことは、ヒト体内では、抗真菌薬の効果が低下していることを示唆するものであった。さらに、試験した全ストレスに転写応答する遺伝子を探索したところ、266遺伝子を同定することができた。酵母での環境応答因子との比較解析によって、糸状菌アスペルギルスフミガタスでは、真菌に共通のストレス応答因子と糸状菌固有の因子によって、ストレス応答能が支えられていることが示唆された。それらの成果を論文として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アスペルギルスフミガタスの環境ストレス(熱ストレス、酸化ストレス、浸透圧ストレス)時の転写応答解析を進めた。具体的には、遺伝子発現量の算出、各ストレス条件下で発現変動を示す遺伝の選抜、各時間で特徴的な機能遺伝子群の選抜などの統計解析を進めた。その結果、本菌において一過的に発現変動を示す遺伝子群を同定できた。さらに、試験した全ストレスに共通して応答する因子の同定へと進め、論文として発表できたことから、概ね順調と考えている。

今後の研究の推進方策

低酸素条件など、別の環境ストレスにおける転写応答についても解析を進め、これまでのデータとの統合を図る。また、共発現する遺伝子群について解析を進め、データベースとしての公開を目指し、更なるデータ整備を進める。その際に、公共データを取り入れることでデータサイズを拡大して、より汎用的な発現データの作成を計画している。同定した266遺伝子に関しては、文献調査により機能未知の遺伝子を解析候補として選抜し、欠損株作製などの解析によって、本菌のストレス応答能の分子レベルでの解析を進める。また、当初計画してなかったが、ストレス付与時の菌糸の形態的特徴を解析することで転写応答の時間変化との関係に迫ることを計画している。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 論文執筆(Takahashi et al., 2017として発表)とリバイスの追加解析に研究時間の多くを割いたので、データ取得等の実験が遅れた。そのため、RNA-seq解析の追加解析用の消耗品を計上していたが、未使用である。技術補佐員への謝金を予定していたが、適任者が見つからなかったために採用に至らず予定額に満たなかった。
(使用計画) 追加のRNA-seqデータ取得に関する消耗品の購入に充当する。新たに形態観察の必要性が生じたため、観察用の顕微鏡関連備品の購入に充当を予定している。技術補佐員への謝金、成果発表用のPC購入に充当する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Global gene expression reveals stress-responsive genes in Aspergillus fumigatus mycelia2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Hiroki、Kusuya Yoko、Hagiwara Daisuke、Takahashi-Nakaguchi Azusa、Sakai Kanae、Gonoi Tohru
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 18 ページ: 18(1):942

    • DOI

      10.1186/s12864-017-4316-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ribosomal subunit protein typing using matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry (MALDI-TOF MS) for the identification and discrimination of Aspergillus species2017

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Sayaka、Sato Hiroaki、Tanaka Reiko、Kusuya Yoko、Takahashi Hiroki、Yaguchi Takashi
    • 雑誌名

      BMC Microbiol

      巻: 17 ページ: 17(1):100

    • DOI

      10.1186/s12866-017-1009-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] テブコナゾール選択はAspergillus fumigatusの医療用アゾールへの交差耐性を誘導する2018

    • 著者名/発表者名
      豊留孝仁,大西賢治,楠屋陽子,石原潤一,萩原大祐,渡辺哲,亀井克彦,高橋弘喜
    • 学会等名
      第91回日本細菌学会総会
  • [学会発表] Whole-genome sequencing for analysis of genetic diversity in a neonatal MRSA outbreak2018

    • 著者名/発表者名
      Takada S, Takaya A, Matsuoka Y, Takahashi H, Katayama Y, Taniguchi T, Igari H, Shimojo N, Matsue H
    • 学会等名
      第91回日本細菌学会総会
  • [学会発表] Aspergillus fumigatusの銅代謝機構の解析2018

    • 著者名/発表者名
      楠屋陽子,辺彩,萩原大祐,矢口貴志,高橋弘喜
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
  • [学会発表] Phenotypic variations indicate an in vivo evolution in clinical isolates of Aspergillus fumigatus2018

    • 著者名/発表者名
      Bian C, Hagiwara D, Kusuya Y, Watanabe A, Takahashi H
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
  • [学会発表] Diversity of Aspergillus fumigatus clinical strains in the potential pathogenicity-related properties2018

    • 著者名/発表者名
      Hagiwara D, Kowalski CH, Cramer RA, Takahashi H, Takagi H, Watanabe A, Kamei K
    • 学会等名
      8th Advances Against Aspergillosis
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Aspergillus fumigatus隠蔽種におけるグリオトキシン産生能の検討2017

    • 著者名/発表者名
      萩原大祐,高橋弘喜,矢口貴志,酒井香奈江,楠屋陽子,渡辺哲,亀井克彦
    • 学会等名
      真菌症フォーラム第23回学術集会
  • [学会発表] Aspergillus fumigatusの銅代謝転写因子Afmac1及びcufAの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      楠屋陽子,辺彩,萩原大祐,矢口貴志,高橋弘喜
    • 学会等名
      第17回糸状菌分子生物学コンファレンス
  • [学会発表] Investigation of adaptation to environmental stimuli in Aspergillus fumigatus during infection2017

    • 著者名/発表者名
      Bian C, Hagiwara D, Kusuya Y, Watanabe A, Takahashi H
    • 学会等名
      第17回糸状菌分子生物学コンファレンス
  • [図書] 化学療法の領域 組成解析(真菌)2017

    • 著者名/発表者名
      高橋弘喜
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      医薬ジャーナル社

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi