研究課題
放線菌のミコール酸含有細菌に対する二次代謝応答機構について、モデル放線菌を用いた解析を行った。当初の研究計画では複合培養時の放線菌網羅的転写解析の結果をもとに発現変動遺伝子を不活化するアプローチにより、ミコール酸含有細菌に対する放線菌Streptomyces coelicolorの二次代謝活性化応答に関与する遺伝子を同定する計画を立てた。しかしながら活性化遺伝子の中で候補遺伝子を選抜し、その変異株を取得し、二次代謝応答性試験を行ったが野生株の応答性と比較し、有意な変化を生じる変異株は得られなかった。また網羅的転写解析により同定された活性化遺伝子の上流非翻訳領域の推定プロモーター領域をクローニングしたレポーターアッセイも成功しなかった。そこで順遺伝学的手法を用いた遺伝子の同定を試みた。これまでにランダム変異株ライブラリーを重イオンビームを変異源として作製し、約15万株のスクリーニングから有望な非応答性の放線菌変異株を59株取得した。現在16株のゲノムリシーケンスを行い、それぞれの変異株の変異点の同定に至った。放線菌のミコール酸含有細菌に対する二次代謝応答機構についてその普遍性を検証するために、自然共分離菌を用いて解析を行った。舳倉島由来共分離菌の中で見いだされたStreptomyces属放線菌とMycobacterium属細菌の組み合わせを解析した。二種類の菌は共培養時にモデル菌の例と同様に共凝集することがSEM観察などから明らかになった。二層式フラスコ培養を用いた培養では、互いが接触する条件でのみ枯草菌に対する抗菌活性物質が生産されることが明らかになった。本活性物質は特徴的なUV吸収やマス強度を有していなかったため、容易に同定できず、構造決定に至ってないが、現在活性を指標に単離精製を試みている。
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