研究課題/領域番号 |
16K18674
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大塚 淳 東京医科歯科大学, 教養部, 非常勤講師 (60597136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放線菌 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
放線菌 Streptomyces griseus は、転写制御因子 AdpA によって抗生物質等の有用物質生産に必要な遺伝子群の発現をコントロールしている。AdpAは10塩基長の曖昧な配列パターンを認識しゲノムDNAに結合することが知られているが、二量体で機能するときの認識機構については未解明な部分が多い。本研究ではAdpA結合部位とその周辺の塩基配列に着目し、AdpAの認識機構を明らかにすることを目的とする。 ゲノム配列上の約300箇所の推定結合部位(100~200 bp程度、Higoら2013より)を対象とし、各部位に含まれるAdpA認識配列の候補を列挙した。候補を推定するにあたり、既知の2要素(10塩基長の前半に存在する塩基配列の特徴 および 後半に存在する塩基配列の特徴)を条件とした。 過去に示されたAdpA-DNA間の結合力と塩基配列の相関(Yamazakiら2004より)を参考にし、認識配列の候補の結合力を予想した。9割の候補は結合力が十分であると予想できた一方で、残りの候補は結合力が極めて弱いと予想された。そのため、認識配列の候補を推定する方法に問題があると判断した。今後は配列の候補を推定するための条件を緩め、より広く配列候補を列挙して評価することとした。 AdpAが確実に結合するとみなされている約50個の10塩基長の配列が過去に報告されている。これらの配列の後半に含まれるモチーフを見出し、分子動力学シミュレーションでこのモチーフの意義を評価した。モチーフが存在することによって、DNAが湾曲しやすくなるという定性的な結果が得られた。これは、AdpAとDNAの結合にはDNAの大きな構造変化が伴うという過去に提唱されたモデルを支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象としている約300か所の領域は各々が100~200 bp程度の長さであり、各々の領域の中から2つの10塩基長からなる曖昧な配列パターンを見出して信憑性を評価する必要がある。また、認識配列を選定する条件を修正するたびにこの作業を行う必要がある。そのため、AdpA認識配列にひそむパターンを予想し、予想に基づいてAdpA結合部位の候補を探索し、評価する流れを確立できたことは、本研究の今後の進展に大きく寄与する。 一方で、現時点で推定しているAdpA認識に必要な塩基配列のパターンは、一部の結合領域において妥当ではないことが明らかになった。このことは、過去に得られた知見だけではAdpAの結合様式を説明できない可能性があるということを意味する。AdpAが塩基配列を認識するモデルを修正する糸口がつかめたと考えている。 10塩基長の塩基配列の後半部分についてDNAの高次構造と塩基配列を対応づける結果が、分子動力学シミュレーションによって得られつつある。結合部位の周辺の塩基配列についても同様の方法が適用できることから、10塩基長の塩基配列の後半部分について良好な結果が得られつつあることは、本研究の今後の進展に欠かせない進捗であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、放線菌 S. griseus の AdpA結合部位の候補を探索し、評価する。AdpAが認識する塩基配列のパターンの推定、候補配列を含むDNAがとりうる高次構造の予想、およびシミュレーションによるこれらの検証を行う。これにより前年度までに立案したモデルが修正でき、より多くのAdpA結合部位について塩基配列のパターンとAdpAとの結合力を対応付けるモデルを提唱できるものと期待している。 立案したモデルの信憑性を高めるために、近縁の放線菌においても同じモデルを適用することができるか否かという検証を行いたい。また、同じくモデルの信憑性を高めるために、研究対象としているゲノム上の領域がとり得る高次構造をDNAラダーアッセイ等の実験によって推定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の一部において研究代表者が予想できなかった結果が得られたことから、研究計画を微修正した。それに伴い、平成28年度に計上した物品費の一部および旅費・その他の費用を平成29年度に繰り越すことで、研究全体の進展を維持することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーション等のデータのバックアップに必要な消耗品の購入費用、電気泳動等の実験に必要な消耗品の購入費用、および研究成果発表に伴う諸経費として使用する予定である。
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