研究実績の概要 |
本研究では, 大腸菌を宿主に, 合成代謝経路を構築するとともに宿主の代謝系や培養条件を最適化することで, 再生可能資源からの “非天然型” 短鎖脂肪酸である3,5-ジヒドロキシペンタン酸 (3,5-DPA) の効率的生産技術を開発することを最終目的としている。その達成には, (1) 鍵酵素Pctの従来の基質であるプロピオン酸とグルコースを出発基質とした3-ヒドロキシペンタン酸合成代謝経路の大腸菌での構築, (2) 3-ヒドロキシプロピオン酸とグルコースを出発基質とした3,5-DPAの生産とPctへの変異導入による高性能化に基づく3,5-DPA生産の向上, (3) 再生可能資源であるグルコースとグリセロールの混合物を出発基質とした3,5-DPAのスモールスケールでの生産, (4) 3,5-DPA高生産を目指した代謝の最適化, (5) 培養条件の最適化による効率的生産を実現し得るバイオリアクターの構築, の課題を検討する必要がある。 本年度は, プロピオン酸とグルコースを出発基質とした3-ヒドロキシペンタン酸合成代謝経路の大腸菌での構築に取り組んだ。ルーメン細菌Megasphaera elsdenii由来pct, 水素細菌Ralstonia eutropha由来bktB, phaB及び大腸菌由来チオエステラーゼで構成される合成代謝経路を設計するとともに, 大腸菌に付与した。造成した大腸菌を好気的にグルコース及びプロピオン酸存在下で培養したところ, 3-ヒドロキペンタン酸の生成が確認された。この結果は, 設計した合成代謝経路が機能的に大腸菌内で構築されたことを示唆していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, グルコースとプロピオン酸から3-ヒドロキシペンタン酸を生産しうる大腸菌を造成することを主目的として, Pctの進化工学的アプローチによる高性能化のための基盤を整備することを予定していた。前述の通り, 本年度内に3-ヒドロキシペンタン酸生産大腸菌を造成することに成功していることから, 概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高性能Pctスクリーニング法を確立するとともに, 3-ヒドロキシプロピオン酸を効率的に活性化する変異型Pctの取得を行う。その後, グリセロールから3-ヒドロキシプロピオン酸を生産する代謝経路を加えて付与することで, グルコースとグリセロール基質からの3,5-DPA生産を試みる。
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