研究実績の概要 |
本研究では, 大腸菌を宿主に, 合成代謝経路を構築するとともに宿主の代謝系や培養条件を最適化することで, 再生可能資源であるグルコース及びグリセロール混合物からの “非天然” 短鎖脂肪酸である3,5-ジヒドロキシペンタン酸の効率的生産技術を開発することを最終目的としている。 本年度はまず, 昨年度に構築した, (i) bktB, phaB, dhaB123, gdrAB, pduP, (ii) pct, bktB, phaB, dhaB123, gdrAB, aldH, を保有する2つの組換え大腸菌を用いて, グルコース及びグリセロール混合物からの3,5-ジヒドロキシペンタン酸の発酵試験を行った。グルコース, グリセロールの濃度を変化させ生産を試みたが, 目的物質の生成は確認されなかった。そこで, (ii) の合成代謝経路に用いているグリセロールを3-ヒドロキシプロピオン酸に変換する経路が実際に機能しているかを確認するため, dhaB123, gdrAB, aldHを大腸菌内で発現させグリセロールを原料に培養した。その結果, 3,5-ジヒドロキシペンタン酸生産のための重要中間体である3-ヒドロキシプロピオン酸の生成が確認され, これは, 3-ヒドロキシプロピオン酸の供給ではなく, もう一つの重要中間体であるアセチルCoAの供給に課題であることを示唆していた。そこで, アセチルCoA供給強化を試験するべく, ピルビン酸脱水素酵素複合体遺伝子の負の転写制御因子であるPdhRを欠損させた変異株を作製し, 1,3-ブタンジオール生産をモデルにその効果を調査した。その結果, 酸素供給を絞った微好気条件で培養した場合, PdhRの不活化は, 有意に1,3-ブタンジオール生産を向上させることを見出した。これは, PdhRの欠損により, アセチルCoA供給が強化されたことを示唆していた。
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