研究課題/領域番号 |
16K18681
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
土肥 裕希 岡山理科大学, 工学部, 研究員 (20705412)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 乳酸菌 / 代謝制御 / グリセロール |
研究実績の概要 |
乳酸菌エンテロコッカス フェカリスは高いグリセロール資化能を有する。本菌が有するグリセロール代謝経路において、リン酸化経路と呼ばれる代謝経路を担う酵素遺伝子は基質(グリセロール)と酸素に応答して発現が誘導される。しかしながら、このグリセロール応答に関与するタンパク質・遺伝子は同定されておらず、応答機構も明らかにされていない。本研究では、エンテロコッカス フェカリスのグリセロール代謝にかかわる遺伝子を幅広く見出すことで本菌のグリセロール応答に関与するタンパク質/遺伝子を同定し、そのグリセロール応答機構を明らかにすることを目的とした。 目的とする遺伝子の同定には、トランスポゾン(Tn)によるランダム変異株作製法を用いた。グリセロール代謝にかかわる遺伝子に変異すなわちTnが挿入された菌株は、グリセロール資化能が低下あるいは消失することが予想される。そこで、Tn作製プラスミドを用いてクロラムフェニコール耐性遺伝子をマーカーとして含むTnを作製し、解析対象であるエンテロコッカス フェカリス W11株のTn変異株を作製した。これまでにTn変異株を約2,000株作製し、これらのグリセロール資化能試験を行った結果、グリセロール資化能が低下・消失した変異株をすでに12株得た。現在、応答因子を含めたグリセロール代謝に寄与する遺伝子の幅広い獲得に向けて、さらなるTn変異株の作製を行っている。また、作製した変異株の変異遺伝子(Tn挿入部位)を同定するため、エンテロコッカス フェカリス W11株のゲノムDNA配列を解析し、その全ゲノム配列(約2.8 Mb)を解読した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始当初は、トランスポゾン(Tn)を用いたエンテロコッカス フェカリスのランダム変異株作製に、テトラサイクリン(Tc)耐性遺伝子をマーカー遺伝子として含むTnを使用した。しかし、その後の解析によって、培養条件によってはTc耐性遺伝子の発現が本菌のグリセロール代謝を抑制することが判明した。そこで、Tc耐性遺伝子に代わってクロラムフェニコール耐性遺伝子をマーカー遺伝子として含むTnを使用し、再度、エンテロコッカス フェカリスのTn変異株の作製を行ったため、研究の進捗にやや遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
エンテロコッカス フェカリスのトランスポゾン(Tn)変異株を計5,000株に至るまで引き続き作製し、グリセロール資化能が低下・消失したTn変異株を選抜する。その後、これまでに得られている目的変異株と併せてその変異部位(Tn挿入部位)を決定することで、グリセロールへの応答や代謝に必要あるいは必須とされる遺伝子を同定する。 続いて、同定された遺伝子にコードされるタンパク質等のグリセロール代謝への寄与を解析する。解析手法は対象とするタンパク質によって異なるが、目的とする応答因子の他、転写調節因子など、グリセロール代謝にかかわる一連の代謝制御ネットワークにおいて、比較的上位に位置すると考えられる因子を優先的に解析していく。
|