残留性有機汚染物質POPs(Persistent Organic Pollutants)の中で意図的に製造された化合物で2番目に埋設量の多いDDT(dichloro diphenyl trichloroethane)は分解菌の報告例はあるものの、分解経路については未知のままであり、実用レベルで利用するための酵素の改良ができない状況にある。近年、HCH分解酵素群の1つである脱塩化水素酵素LinAがDDTの分解にも応用でき、さらにPCB分解酵素群(EtbAa2-Ab2、BphB、EtbC)と組み合わせることでDDTの環を開裂できる可能性が示された。本研究ではその中でDDT分解にかかわるLinAとそれによってできるDDEに酸素を添加する酵素EtbAa2-Ab2を対象としてDDTの初期分解経路の構築を目的としている。 本年度はEtbAa2-Ab2の立体構造解析を分解能3.2Åで行い、反応が行われるEtbAa2と類似性の高い酵素との比較を行った。EtbAa2はRhodococcus jostii RHA1由来のbiphenyl diogenase BphA1と最も構造の類似性が高く、RMSDは1.4Åであった。また、類似性の高い他のBiphenyl dioxygenase BphALB400、BPDOB356、BPDO-OB1とも比較した結果、EtbAa2は活性部位周辺のアミノ酸のいくつかが(A215、G295、S296、S299)、形の小さなアミノ酸になっていることが明らかになった。これらのアミノ酸の違いは、EtbAa2-Ab2が大きな化合物を基質にできることを示唆した。
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