研究課題/領域番号 |
16K18686
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 智和 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90584970)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / セリンラセマーゼ / D-セリンデヒドラターゼ |
研究実績の概要 |
哺乳類をはじめとした真核生物には内因性のD-アミノ酸が存在し、重要な生理機能を示している。本研究では、2種類のD-Ser代謝酵素(セリンラセマーゼおよびD-セリンデヒドラターゼ)の詳細な酵素学的解析、応用利用、生理機能解析に行うことで、真核生物のD-アミノ酸バイオシステムを理解することを目的としている。 本年度においては、以下の3項目、すなわち(1)真核生物型セリンラセマーゼの触媒・制御機構の基盤情報を所得すること。(2)D-セリンデヒドラターゼ(Dsd)を用いたD,L-Ser酵素定量法のキット化を図り、D-Ser比の腎障害マーカーとしての可能性を検証すること。(3)ブナシメジ子実体特異的なDsd基質D-アミノを同定すること。について取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真核生物型セリンラセマーゼの触媒・制御機構の基盤情報の所得を目的とし、セリンラセマーゼ・基質複合体結晶構造解析に取り組んだ。この目的の為に、アポ化セリンラセマーゼの調製方法を確立した。また、シッフ塩基を還元したピリドキシルD-セリンおよびピリドキシルL-セリンの調整法を確立した。DL-セリン酵素定量法の高感度化を目的とし、キシレノールオレンジを用いた酵素定量法および、ピルビン酸オキシダーゼおよび乳酸オキシダーゼを用いた新規のサイクリングアッセイ法を構築し、この有用性を検証した。ブナシメジ特異的に存在するD-アミノ酸を同定し、これが(2R,3S)2-アミノ-3,4ジヒドロキシ酪酸であることを同定した。さらにこれが子実体形成期に生合成されることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
同様に、シッフ塩基還元型ピリドキシル-アスパラギン酸を調整し、これを結合したセリンラセマーゼの結晶化を検討する。健常者および腎障害患者におけるヒト尿中DLセリン値およびその比の動態解析を行うとともに、各値と各種腎障害マーカー(eGFR, L-FABPなど)との関連性を検証する。ブナシメジに見出したユニークなアミノ酸の合成法を確立するとともに、Dsdとの関連性や、代謝経路について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
キノコにおけるD-アミノ酸の同定過程で、多くの解析法の検討や、質量分析、構造解析などを予定していたが、順調に研究が進捗したため支出が少なくなった。また、一方でセリンラセマーゼの構造解析では、研究があまり進捗せず、支出が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度にイタリアにおいて上記研究成果について成果発表を予定しており、その一部は旅費として使用する予定である。また、構造解析の進捗により、申請予算は予定通り支出される予定である。
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