研究課題
哺乳類をはじめとした真核生物には内因性のD-アミノ酸が存在し、重要な生理機能を示している。本研究では、2種類のD-Ser代謝酵素の詳細な酵素学的解析、応用利用、生理機能解析によって、真核生物のD-アミノ酸バイオシステムを理解することを目的としている。本年度は、D-セリンデヒドラターゼを利用したD,L-Ser酵素定量法を用いた多検体分析を行い、ヒト尿中D-Ser比の腎障害マーカーとしての可能性を検証した。その結果、ある場合において、ヒト尿中D-セリンレベルを腎機能低下を予測可能なバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆された。また、腎障害自然発症ラットを用い、腎障害の発症前段階、および発症早期過程での血中、尿中D-セリンレベルの変動について解析し、D-セリンレベルが腎障害早期発見のバイオマーカーとして利用できるか否か検証した。ヒト尿中のD-セリンの動態を解析している過程で、尿中に新奇のDsd基質アミノ酸が存在することを見出した。種々のアミノ酸代謝酵素の反応特異性や、質量分析を利用し、この未知アミノ酸の同定に取り組み、この未知アミノ酸をL-ヒドロキシアスパラギンと同定した。また、同アミノ酸のラット体内における局在を検証したところ、同アミノ酸は尿中に高濃度で存在する一方で、血中や脳、腎臓、肝臓などの組織においては存在しないか、ごく微量であることが示唆された。同アミノ酸の生理作用、代謝機構などを明らかとする目的で、同アミノ酸の新規合成法の開発に着手した。
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