研究課題/領域番号 |
16K18688
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
中野 祥吾 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80748541)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工タンパク質 / アミノ酸脱水素酵素 / コンセンサス設計 / アミノ酸一次配列解析 |
研究実績の概要 |
H28年度は安定かつ高性能な配列データベース由来人工L-スレオニン脱水素酵素 (TDH) の設計と機能解析を目的として研究を進めてきた。まずは人工TDHの設計について説明する。Cupriavidus necator由来TDH (CnTDH) の配列をBlastpで解析し、配列データベースより5000個の類似配列を得た。独自に開発した配列解析ソフトウェア”INTMSAlign_Angler”を用いることで、TDH活性を有すると期待された候補配列を87個予測した。この候補配列を基に完全コンセンサスタンパク質を設計することで、人工TDH (FcTDH) の一次配列を設計した。 FcTDHをコードする遺伝子を合成し、pET15bベクターにクローニングしたのち、大腸菌発現系を用いてFcTDHの発現を試みた。結果、1LのLB培地を用いた培養で、50 mg以上のFcTDHを得ることに成功し、その精製プロトコルを確立した。次に精製したFcTDHを用いて酵素化学解析を行った。20種類のL-アミノ酸に対する特異性を調べたところ、FcTDHはL-スレオニンに対して高い特異性を示すことが判明した。さらに酵素熱安定性について調べた結果、FcTDHのTm値はCnTDHに比べて約20℃向上することが判明した。FcTDHの速度論的パラメータを決定したところ、FcTDHのkcat/Km値はCnTDHに比べて約20%向上していた。以上の結果から、設計したFcTDHはCnTDHに比べて、熱安定性・酵素触媒効率に優れることが判明した。またFcTDHのX線結晶構造解析も進めており、現在までに2.8Å分解能でapo型の立体構造を決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りH28年度に”安定かつ高性能な人工TDH”を設計することができたといえる。事実、設計したFcTDHは鋳型とした既知のCnTDHと比べて、熱安定性および酵素触媒効率が向上していた。本成果の一部に関しては1件の特許出願を含め成果発表を進めており、その進捗状況は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は決定したFcTDHの立体構造を参照し、その活性中心に部位特異的変異を導入することで、基質特異性の変換などを行う予定である。具体的にはL-セリンや(R)-3-ヒドロキシ酪酸への特異性を獲得させることを目指す。 またH28年度の研究遂行の過程で、TDHのアロステリック効果に関する新たな知見が得られる、新規TDHを取得することに成功した。H29年度は本酵素の構造機能解析も併せて行う予定である。
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