研究実績の概要 |
H29年度は、短鎖型L-スレオニン脱水素酵素 (TDH)の基質選択性拡大に向けて、祖先型設計法により人工L-スレオニン脱水素酵素を新たに設計した。H28年度に取得した、87個のTDH候補配列から構成されるライブラリを用いて、MAFFTによる多重配列アラインメントを行い、MEGAによる最尤法を用いた系統解析を行ったのち、FASTMLを用いて、TDHの祖先型配列 (AncTDH) の設計を行った。AncTDHに関して人工遺伝子合成を行い、pET15bベクターにサブクローニングを行い、大腸菌発現系を用いてAncTDHを大量発現させた。結果30mg/L以上のAncTDHを得ることができた。精製したAncTDHに関して各種酵素化学解析を行った結果、AncTDHは微弱ながらR-3-ヒドロキシ酪酸やS-3-ヒドロキシ酪酸に活性を有することが判明した。 加えて新規に取得した単量体型TDH (mtTDH) について構造機能解析を行い、TDHの生成物脱離機構の解明を行った。X線結晶構造解析によりmtTDHに関してapo, NAD+結合型、NAD+-L-Ser結合型、及びNADH-2-アミノ-3-ケトブチル酸 (AKB) 結合型の4構造を1.2-1.9Åという高分解能で決定した。フラグメント分子軌道法 (FMO法) を用いたタンパク質ーリガンド間の相互作用解析、及び各種変異体を用いた酵素化学解析により、mtTDHのAsp179が反応完了を感知するセンサーとして働き、TDHの開閉構造の切り替えを制御しながら、生成物の脱離を行っていることを予測した。本成果について、Biochemistry誌にて発表を行った。
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