研究実績の概要 |
植物疫病菌はトマトおよびジャガイモに感染し葉に暗褐色の病斑を作るだけでなく、果実を腐敗させる感染症であり、近年発生が増加している植物病害の1つである。また、疫病菌は防除が難しく、作柄に大きく影響する病害として恐れられている。現在使用できる農薬は限られており、人体への影響や環境汚染の問題からも、疫病菌に特異性の高い選択性農薬の開発が急務となっている。本研究では植物疫病菌のL-スレオニン代謝に重要な役割をするL-スレオニン脱水素酵素(ThrDH)に着目している。植物疫病菌から見出された新規なタイプのL-スレオニン脱水素酵素を特異的に阻害する新しい農薬開発の基礎を築くことを目的としている。 植物疫病菌であるPhytophthora infestansのゲノム情報からThrDH遺伝子ホモログ(PITG_05140)を見い出すと共に、タンパク質発現用ベクターであるpCold TF, pCold ProS2, pCold I, pET32a, pET11a, pET15bベクターに挿入し、大腸菌を用いてIPTGによる遺伝子の発現を行った。その結果、pCold TF, pCold ProS2, pET32aなどの融合タンパク質との共発現タイプのベクターでThrDHの発現が確認できた。特にpET32aベクターを用いた場合にThrDHの大量発現・精製が可能である事を明らかにした。また、活性染色法による酵素活性の確認を行った結果、NAD依存的にL-スレオニンの脱水素反応を検出することに成功した。今後、本酵素の酵素化学的性質の解析および、立体構造解析を目的とした結晶化、X線回折実験を行う予定である。
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