研究課題/領域番号 |
16K18691
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
戸部 隆太 立命館大学, 生命科学部, 助教 (00758823)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Selenium / Thioredoxin / Bacteria / Selenoprotein / Reduction |
研究実績の概要 |
セレン(Se)は、哺乳類をはじめとする多くの生物における必須微量元素である。生体内では主にセレンタンパク質の形で細菌・アーキア・真核生物の3生物ドメイン全てに存在し、抗酸化作用など重要な生理的役割を果たしている。一方で、Seの過剰摂取は生体毒性を示す。そのため、生体内には「必要なSeを安定かつ無毒な形でセレンタンパク質合成系に転移する系」と「過剰なSe化合物を速やかに還元(無毒化)し、細胞外に排出する系」が存在すると考えられた。本研究では、高濃度Se蓄積土壌より単離したPseudomonas sp. F2a株を対象とし、Seの代謝メカニズムの解析を進めた。F2a株のゲノムを解読し、Seの還元に関与することが考えられるチオレドキシン関連タンパク質を本菌は複数有することを明らかにした。また、各遺伝子をクローニングし、大腸菌を宿主とする異種発現系を構築し、各タンパク質を6×Hisタグ融合タンパク質として精製した。これら精製タンパク質を用いて、本タンパク質群が亜セレン酸の還元活性を有することを示し、反応課程で生成される中間体をMSにより分析することでその分子メカニズムを解析した。さらに、解読したF2a株のゲノムを大腸菌や枯草菌などSe化合物(セレン酸および亜セレン酸)の耐性能や還元能の比較的低い他菌種のゲノムと比較し、本菌の有する高いセレン化合物耐性能や還元能がどの遺伝子・タンパク質に起因するのかを解析し、いくつかの候補遺伝子(群)を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、高濃度Se蓄積土壌より新たに単離した高濃度Se耐性菌Pseudomonas sp. F2a株より抽出したゲノムを次世代シーケンサーにて解析し、全ゲノム配列を解読した。また、得られたゲノム情報を用いてF2a株の有する6種のチオレドキシンと3種のチオレドキシン還元酵素遺伝子をクローニングし、これらの精製タンパク質を得た。ただし、これらのうち、1種のチオレドキシンおよび1種のチオレドキシン還元酵素に関しては、可溶化タンパク質として得られておらず、現在、精製条件の検討中である。さらに、これらを用いて亜セレン酸の還元活性を測定し、還元の際に生じると考えられる中間体をMSにより解析した。これらは、前例のない初めての例であるため、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、得られたゲノム情報を基に、F2a株におけるセレンタンパク質の探索、およびNative-PAGE、活性染色法およびMS解析を用いてSe化合物(セレン酸および亜セレン酸)還元酵素(群)を特定する。
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