現代社会において肥満は深刻な問題として認識されている。そのため、肥満の予防・改善に有効な食品由来成分の同定及び機能解析は、国民の健康増進に寄与するうえで重要である。近年の研究結果より、腸内の慢性的な炎症と肥満との間に密接な関係があることが指摘されている。そこで、本研究では「腸内炎症の抑制機能を有する食品成分の同定」及び「本効果の作用機序解明」を目的に研究を進めてきた。 本年度は、培養細胞や動物を用いた実験、さらにはLC-MSを用いた成分解析を通し、トマト果実に含まれる機能性成分を特定し、さらにその効果を評価することを中心に研究活動を行ってきた。 その結果、トマト果実中には非常に多様な有用成分が含有されていることを見出した。さらには当該有用成分の一部は、トマト果実抽出物を摂食させたマウス組織からも検出された。当該成分は腸管から体内に吸収され、検出された組織に到達したことが推定される。また、当該成分は肥満惹起の要因の一つである脂肪組織での慢性的炎症反応を抑制することで、その効果を発揮することを見出した。 さらには、食品が有する機能性の評価の在り方について、本研究結果が解決の一助になることが期待される。食品は、医薬品とは異なり、非常に多様な成分の総合力としてその機能性を発揮しているため、「食品の機能性」を科学的指標でどのように評価すべきか、また、「食品の機能性」を発揮する成分の全容をいかに把握するかが重要である。本研究は、前述した食品機能性の評価法を確立していく上でも重要な成果を得ることができた。 本研究の成果については、学術誌において、原著論文として発表した [PLOS One. 2018 Jan 12;13(1):e0191203] 。
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