研究実績の概要 |
最も合成しやすい4AcQの合成経路を基本とし、反応条件を検討することで5AcQ, 3AcQ-Aが高収率で得られた。また、位置違いのアセチル基を持つ4AcQ-B, 3AcQ-Bはケルセチンのヒドロキシ基をアセチル修飾するのではなく、既にアセチル化された5AcQまたは4AcQ-Aからそれぞれ7位アセチル基を選択的に脱離させることによって合成を試みた。 細胞実験では、Quercetinと合成した5種類のアセチル化体を用いてヒト結腸癌細胞HCT116 p53+/+, HCT116 p53-/-における細胞増殖抑制能とプログラム細胞死の一種であるアポトーシス誘導能を評価した。その結果、アセチル化体はケルセチンよりも強い細胞増殖の抑制とアポトーシスの誘導を引き起こし、その強さは4AcQ, 3AcQ, 5AcQの順であった。またウエスタンブロッティングにより細胞周期関連タンパク質の発現を検出した結果、Quercetinや他のアセチル化体と比べ、4AcQが早い段階で細胞周期停止を引き起こしていることが示唆された。 膜透過性評価においては、Quercetinは受動拡散による膜透過が低いのに対し、アセチル化体は5AcQ, 4AcQ, 3AcQの順に高い透過性を示した。実測値であるPAMPAによる透過性試験と予測ソフトウェアを用いた同実験での透過性シミュレーションは同じ傾向を示した。これらの結果より、ケルセチンよりも生理活性が高くなるアセチル化体は、膜透過率を増加させていることが明らかになった。しかし、アセチル化体の中では、生理活性は4AcQ-Aが高く、透過性は5AcQが最も高い値を示したことより、透過性以外にも生理活性作用に影響を与える要因があることが示唆された。
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