研究課題/領域番号 |
16K18705
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
近藤 嘉高 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20507397)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光老化 / ビタミンC / アスコルビン酸 / ビタミンE / エストロゲン / ヘアレス / 皮膚 / 紫外線 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らが独自に開発したビタミンC(VC)を体内で合成できないSMP30ノックアウト(KO)マウスと、エストロゲンを合成できないAromatase(Ar)-KOマウス、ヘアレスマウスを掛け合わせたSMP30/Arダブルノックアウト(DKO)ヘアレスマウスを用いて、青壮年期の女性(エストロゲン充分)や更年期以降の女性(エストロゲン欠乏)の皮膚におけるVC不足, VE不足, 2重(同時)不足が皮膚に及ぼす影響、特に紫外線による皮膚の黒化やシワの形成(光老化)に及ぼす影響を明らかにする。本研究により、閉経前と閉経後の女性におけるVC, VE, その相互作用の光老化抑制効果を明らかにできる。 本年度は、VC, VE, エストロゲンを合成できないSMP30/Ar-DKOヘアレスマウスを作出した。SMP30/Ar-DKOヘアレスマウスの作出は、自然交配では長期間を要する上、Ar-KOマウスは不妊のため、作出効率が著しく低い。そこで、各マウスから卵子と精子を採取して体外受精・胚移植することにより、不妊マウスの仔も得られ、短期間で交配を進められる。初めに、体内でVCを合成できないSMP30-KOマウスとHos:HR-1ヘアレスマウス(アルビノ、無毛のため皮膚の解析が容易)と交配し、SMP30-KOヘアレスマウス [無毛で黒色(メラニン合成可)、VC, VEを合成できないが、エストロゲンは合成できる]を得た。次に、エストロゲンを合成できないAr-KOマウスと交配し、SMP30/Ar-DKOヘアレスマウス [無毛で黒色(メラニン合成可)、VC, VE, エストロゲンを合成できない)を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の目標であるVC, VE, エストロゲンを合成できないSMP30/Ar-DKOヘアレスマウスの作出に成功した。初めに、体内でVCを合成できないSMP30-KOマウスとHos:HR-1ヘアレスマウス(アルビノ、無毛のため皮膚の解析が容易)と交配し、SMP30-KOヘアレスマウス [無毛で黒色(メラニン合成可)、VC, VEを合成できないが、エストロゲンは合成できる]を得た。次に、エストロゲンを合成できないAr-KOマウスと交配し、SMP30/Ar-DKOヘアレスマウス [無毛で黒色(メラニン合成可)、VC, VE, エストロゲンを合成できない)を作出した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、VC不足, VE不足, 同時不足がマウスの皮膚に及ぼす影響を明らかにする。作出したSMP30-KOヘアレスマウスは、8週齢までVE添加飼料とVC水を与えて飼育後、①VC, VE不足群、②VC十分&VE不足群、③VC不足&VE十分群、④VC, VE十分群の4群(各群5匹)に分け、8週間飼育する。①-④の各群は、それぞれ、紫外線照射なし、UVB(280-320 nm)照射(週3回)、UVA(320-400 nm)照射(週3回)の試験を行う。紫外線の照射量は、事前にVC, VE十分群を用いて決定した最小紅斑量(皮膚が赤くなる最低の照射量)の半量(やけどが起きない)に設定、照射時間は検討する。VC, VE不足が紫外線照射による皮膚の性状に及ぼす影響を明らかにするため、1週間毎にマウス背部皮膚の紅斑量、経表皮水分蒸散量(TEWL)や角質水分量(バリア機能、肌荒れ)、皮膚物理特性(柔軟性、弾力性)を測定する。皮膚の黒化は色彩色差計により皮膚の明度(L値)を、シワの形成は観察によりスコア化(0-4の5段階)する。照射4, 8週間で各マウスを解剖し、背部の皮膚と血液を採取する。もしVC, VE十分群の皮膚の黒化やシワ形成が不十分の場合は、照射期間を延長する等、照射条件を見直す。紫外線による表皮と真皮の肥厚は、皮膚のヘマトキシリン・エオジン染色画像からそれぞれの厚さを計測する。紫外線によるメラニン顆粒の沈着は、フォンタナ・マッソン染色で評価する。VC, VE不足が光老化の病態および発症機序に及ぼす影響を明らかにするため、酸化ストレス指標、抗酸化物質、抗酸化酵素、細胞外マトリクス、細胞外マトリクスの分解系、活性酸素種によるシグナル伝達分子、炎症性サイトカインを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
SMP30/Ar-DKOヘアレスマウスの作出について、体外受精・胚移植の費用が抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度、体外受精・胚移植による実験用マウスの大量作出に充当する予定である。
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